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弁理士が依って立つべき立場(未完)

かなり大袈裟なタイトルで、本日のお話しもご批判が多々あろうかと思いますが…coldsweats01

職務発明制度改正については、特許庁内での調査研究委員会での検討が終了し、いよいよ産業構造審議会知的財産分科会特許制度小委員会(長い名称ですねhappy01)での議論が始まるようです。で、この調査研究委員会の委員名簿が公表されているのですが、この委員の中に日本弁理士会を代表する先生は含まれていなかったようです。この事実について「何故?」とtwitterの私のTL上で仰っていた方をお見かけしたのですが、さて踏み込んで考えてみると、仮に日本弁理士会を代表される先生がこの調査研究委員会に参加された場合、日本弁理士会はどのようなスタンスで、そして誰の意見を集約、代理して発言することができるのかと考えてみると、なかなか難しい問題を孕んでいるように思います。

なお、今日の記事は職務発明制度についてのお話しでもなく、また、私は職務発明制度に関する法改正について、自分のスタンスを公表する予定もありません。というのも、10年ほど前の職務発明制度改正の際に私は前に所属していた企業で社内の担当をしていました。当然のように私は前にいた会社を代表して今さら何かを発言することはあり得ないのですが、可能性として、私の発言が、前にいた会社の見解を示しているかのような捉え方をされることもあるかと考え、そういった捉え方をされるのは私にとっても不本意ですし、前にいた会社にとっても不本意であろうと思います。ノーコメントでいることがいいという判断です。

弁理士は、個々の出願案件について、クライアントである会社なり個人の代理で各種手続を行います。従って、出願案件に関する各種手続については、弁理士は会社なり個人の意思を代理しています。一方、職務発明制度のような知的財産行政に関して、弁理士会として様々な意見を求められる(そして、様々な公的委員会に日本弁理士会から委員が派遣される)と思うのですが、それは、弁理士会はどのような知的財産行政を理想と考え、そして、それは弁理士「以外の」誰かの意見を代理して、あるいは集約して考えたものであるかと振り返ってみると、時々よくわからなくなることがあります。出願人の便宜を考慮してあるべき知的財産制度を提案することはできると思いますが、このような姿勢は、企業知的財産部門の集合体である日本知的財産協会、さらには経団連も同様に取ることができると思います。弁理士法改正であればそれは弁理士会の会員の意見を集約し、有るべき姿を提案すべきですし、それは十分日本弁理士会が行っていると思っています。では、例えば職務発明制度について、日本弁理士会はどのような立場で有るべき制度を提案すべきなのでしょうか。

ちなみに、日本弁理士会は、上に書いた研究会が報告書案をまとめようとするタイミングに、日本弁理士会名義で有るべき職務発明制度に関する提案書を公表しているはず(日本弁理士会のHPに公表されていたはずなのですが、今見ると何もありませんthink)ですので、日本弁理士会として何もしていないわけでもありませんし、私は、そういった姿勢なり行動を十分評価しています。

私が気にしているのは、提案書を作成するにしてもその評価軸はどこに設定すべきなのか、そして、その根拠は何であるかということです。この話は、職務発明制度に限らず、知的財産制度、法制全体にわたってのことです。

当然、日本弁理士会としては、各国における知的財産制度を俯瞰し、どのような知的財産制度であるべきかを高所対処からの見地に基づいて提案することは大事だと思いますし、これまでも様々な取り組みをしていることも承知しています。一方で、日本知的財産協会や経団連は企業の立場から有るべき論を展開します。日本弁理士会は弁理士の立場から有るべき論を展開するわけですが、ここでいう「弁理士の立場」と「企業の立場」との間にどのような差があるべきなのか、そして、その差は何に基づくべきかが自分の中で整理できていません。

例えば、職務発明制度において、弁理士は企業の知的財産部門の方々にお目に掛かる機会も多いですが、発明者の方々にお目に掛かる機会も多いですから、日本弁理士会は発明者の立場も考慮して様々な発言ができる、という考え方もあるでしょう。しかし、職務発明制度において、労働法のように発明者=労働者と企業=使用者とを対立構造で捉える必要があるのかどうか。一方で、仮に対立構造があったとするならば、企業の代理人である弁理士が発明者の立場に立って発言をするべきなのか。

評価軸なり考えの依って立つ場所をどう決めるかについて私の考えがまとまらない理由の一つとして、日本弁理士会の発言なり意見公表により説得力を持たせるための方策が自分自身でも今ひとつつかみ切れていないことにあります。特に、近年は産業財産権法に基づく出願件数が漸減していることもあり、例えば出願件数を増加させることで国内産業の発達に寄与すべきという論調は、ともすると出願件数増加=弁理士全体の報酬増加という我田引水的な発言であるとも捉えられかねないです。当然、出願件数増加が国内産業の発達に直接的に寄与するとも限りません(国内産業発達を実現するには他にも幾つかのファクターがあると思っています)から、我田引水であるとの指摘を間違いであると言葉を返すだけでは説得力に欠けると言われるかもしれません。

もう一つ、日本弁理士会の会務は最終的に会員に還元される(つまり個々の会員にとって利益をもたらす)内容であるべきという考え方を持っておられる先生がおられます。それは、会務活動は会員が支出する会費に基づいて行われている以上、個々の弁理士の利益につながらない会務活動の妥当性があるのか、という考え方に基づいておられるようです。このような先生方の主張にも傾聴すべきところはあります。ただ、こういった考え方も我田引水的であると考えられてしまう余地もあろうかと思います。弁理士先生方の中に様々な考え方があること自体は会内に多様性があることの証左ですので、歓迎すべきことだと思いますが、では振り返って、日本弁理士会がどのような意見を集約して発信すべきかという回答は混沌としてくるように感じます。

なかなか結論の出ない話題なので、本日は問題提起で終わってしまってすいませんが、この辺で失礼します。

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