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2014年4月

無料でセミナーを開く(かもしれません)

本日は、いつもの記事とはちと毛色の変わったお話を。

長期にわたって知財活動がされている企業の場合、知財実務に対する経験の蓄積があるので、明細書のチェックスキームも企業毎にきちんと定められていると思いますが、知財活動の歴史が短い、あるいは出願件数があまり多くない等の理由で、どうやって効率よく、また、より適確に明細書をチェックしたらいいかというお悩みを持っておられる企業がいらっしゃるのではないかと考え、企業知財部門にいた経験と、特許事務所にいた経験とを重ね合わせて、こんなやり方でチェックしたらいかがでしょうかというプレゼン資料を作ってみました。

ただ、私のやり方が本当に皆さんにお役立ちするのかどうかという疑問が結構ありますので、もしよろしければ、色々な立場の方にお聞きいただき、忌憚ないご意見をいただければと思い、無料でセミナーを開こうかな、と思い立ちました。

こんな話でも聞いてみたい!という方がそれなりの数いらっしゃったら、どこかの公共施設を借りてセミナーを開きたいと思います。ご賛同いただける方がいらっしゃいましたら、メールかコメントをいただけると有り難いです。よろしくお願いいたしますm(__)m

我田引水なはなし

本日はちと我田引水の記事を。たまには、ということでお許し下さいm(_ _)m。

何回もこのBLOGで書いているので、飽きていらっしゃる方もおられるかと思いますが、私は知財業界に属している今までの中で、都合2つの企業知財部門に属し、特許事務所の数はそれ以上coldsweats01というキャリアを持っています。しかも、特許事務所業界はある意味出戻りというcoldsweats02。こういった、企業知財部門と特許事務所とを往復した人はそんなにいらっしゃらないように思っています。当然、そういったキャリアがあることで偉そうにするつもりはありません。

振り返ってみると、今でこそ比較的あり得る話になりましたが、特許事務所から企業知財部門への転職(この場合は必然的に中途採用)というキャリアパスが広く認知され、企業知財部門側が特許事務所経験者に対して門戸を比較的広く開け放つようになったのはここ10年程度のことであると思っています。
企業知財部門は、新卒採用や社内の部署移動といったルートはあったものの、他企業からの中途採用にはあまり積極的でなかったと記憶しています。それは、もしかしたら企業の知的財産部門に属する人数に大幅な増加を必要とする事情がなく、言い換えれば即戦力としての中途採用により人材を確保する必要があまりなかったのだろうと思います。企業側も、そもそも中途採用した人材をどのように処遇するか、より細かくは、企業内のキャリアパスが新卒採用を前提としていて、中途採用した人材をどのようにこのキャリアパス内で位置付けるか、があまり明確でなかったのかもしれません。だいぶ前に、私が中途採用で管理職待遇になったことを伝えると、ある企業の知財部門に所属する人が「自分の会社ではそんなことはないですね」と仰っていました。多分、その会社も、今はそういった待遇をすることはないと思っています。

とは言え、企業知財部門と特許事務所とを往復する方はそれほどいらっしゃらない(少なくとも私の周囲ではお一方しか存じ上げません)ようです。

では、企業知財部門と特許事務所とを経験するメリットは何であるか、と問われると、私が真っ先にあげるのは、企業知財部門の立場と特許事務所の立場とを経験することで、一方から他方へのコミュニケーションをより円滑にすることができることではないかと思っています。このメリット自体は、私もこのBLOGで取り上げたことがあると思います。

例えば、私が最初に勤務した企業は、私が中途採用された時に知的財産部門を正式に立ち上げたばかりで、企業内への知的財産マインド定着、知的財産部門の体制作り等、産みの苦しみを味わってきました(この辺りのお話しは、いずれまとめようかと思っています)。従って、技術者から発明報告書が提出されるという体制を作り上げるにも、まずは知的財産マインドの普及から始める必要がありました。とは言え、新規なアイデアは社内で次々と生まれてきていますので、知財担当者側が開発部門を行脚して、どのようなプロジェクトが進んでいるのか、そして、そのプロジェクトにどのような新規なアイデアがあるのかを聞いて回る作業をしていました。幸いなことに、企業の事業範囲はそれほど広いものではなく、先行技術もだいたい頭の中に入っていましたので、発明者から話を聞けば、新規なポイントを抽出してどのように出願するかというプランは立ちます。
一番の難所は、発明のポイントが明確になったとは言え、その内容をどのように出願代理を依頼する特許事務所に伝えるかということです。発明者は新規プロジェクトに係りきりで、特許出願の準備に割ける時間も限られていますし、そもそも、私が入社した当初は、特許出願に関与した発明者自体がごく限られていましたから、様式の整った提案書を書くことのハードルが高かっただろうと思います。
そこで、(こんなことはどなたもやっておられると思いますが)発明者から聞いた内容を元に、発明者に、既にある範囲の中で必要最低限の図面等を提出していただき、あとの文章なりフローチャートは私が作成し、この内容を発明者に確認していただいた上で提案書として仕上げ、特許事務所に出願代理を依頼していました。
一方、特許事務所も、内容や様式が整った発明提案書に対して独自性を追加することが得意な特許事務所もありますし、全くのヒアリングだけで明細書を作成することが得意な特許事務所もあります。これらは、いずれが良い/悪いということではなく、特許事務所の特色と言えるのだと思っています。私は、ヒアリングからでもきちんとした明細書が作成できる特色を有する知人弁理士に出願代理をお願いし、発明提案書に内容の不備があってもヒアリングでこれを補ってもらえることを期待して、多くの特許出願を行ってきました。

この時のコミュニケーションを円滑にする工夫としては、特許事務所が明細書を作成するにあたってどのような資料が必要か、また、ヒアリングでどのようなことがポイントになるかということを知っていましたので、発明者と特許事務所弁理士との間で、ある意味で通訳のようにして相互のコミュニケーションが円滑になることを助け、また、発明のポイントを的確に抽出し、このポイントに基づいて出願するのであればこのような資料が必要になるであろうことを事前に推測し、発明者に資料作成を依頼し、時間がなければ自分で作成したことが挙げられます。明細書のシナリオを事前に立て、このシナリオには何が必要かを考え、特許事務所側の負担をできるだけ軽減するとともに、出来上がった明細書の質を向上するには、こういった手間が必要だと考えたのです。とは言え、こういった作業はどの企業の知財担当者も実践しておられることだと思っています。

一方で、自分自身が既に明細書のシナリオを立案していますので、このシナリオに沿った一定の質が担保できていない明細書草案が特許事務所から納品されてきた場合、企業側も特許事務所側も手間が増えることになります。この意味から、上にも書いたように、出願代理をお願いする特許事務所側も相応の力量を持っている特許事務所を事前に選択し、良い意味での緊張感を持続できるようにチェックを行ってきました。その分、特許事務所側にかなりの負担を強いることにもなったかと思いますが、双方「意気に感じる」仕事ができていたのではないかと思っています。

一方、私は現在特許事務所に勤務して、クライアント様からの出願代理等を受任して仕事をしています。自分が特許事務所に勤務する立場になって、上に書いたコミュニケーション云々という観点から心がけていることとして、クライアント様の立場に立って仕事をする、という、文章にしてしまうと至極真っ当なことになります。
自分が企業知財担当者になって色々とわかったことの一つとして、理想的な仕事は質×時間×金銭のかけ算で最大のアウトプットを得られるものだということです。質については最善である必要は常になく、その発明について企業が求めている明細書の質、ということです。時間は基本的にASAPであることが望ましいです。金銭については、安価であることが基本的に望まれますが、出願代理業務の場合、安価であることは時間をかけずに作業を行うことにつながりかねませんので、その発明について企業が求める質を維持した中での安価、ということになります。
例えば、クライアントから提出された発明提案書の出来がよく、特許事務所側には全体的な見直しをした上で早期に出願を希望された場合、特許事務所側が改めて先行技術調査を行い、発明提案書に記載されている先行技術よりも適切な先行技術を発見し、これに基づいて明細書のシナリオを書き直してしまったことがあったとします。この行為自体は明細書の質向上に寄与していて、一見すると特許事務所側が大きな付加価値を提供しているように見えますが、必ずしもそうではない(むしろそうならない)ことが多いと思います。厳しい言い方をすれば、どのような内容で特許出願をするかについては社内手続(時に決裁手続)を経ていることが多いですから、先行技術が変われば明細書のシナリオも大きく変わり、厳密に言えば再度変更された明細書のシナリオについて社内手続をする必要が出てきます。さらに言えば、クライアントは様々な事情があってその先行技術をreferしているのかもしれない、などなど、クライアントのためと思って行ったことは、実はクライアントにとってためにならない可能性が高いです。
こういった、クライアントのためを思って付加価値を提供しようとする方は、実は企業知財担当経験者で特許事務所に移られた方であることが時々あります。つまり、企業知財担当者の頃は自分の差配により明細書のシナリオを決めていて、その癖が特許事務所に移られても抜けない、ということがあり得ます。
どのような出願においても、クライアントは明確な意味づけを持って出願依頼をしています。そして、その意味づけをクライアントに常に確認できるとは限りません。この場合、特許事務所としては、提供されている情報に基づいて、そして、時に提供されている情報に「限って」出願代理手続を粛々と進めることが求められます。この辺りは、クライアントが特許事務所に何を期待しているかを的確に把握しないと、その加減が難しいです。加えて、私は、期待されている仕事の「やや上」を狙って仕事をするように心がけています。期待されている仕事をするのは当たり前で、「やや上」のレベルの仕事をすることで、将来の予測も含めてクライアントの「ためになる」仕事ができるのだと思っています。この辺りになると、経験が物を言う領域だと思っています。

他にも、企業知財担当者と特許事務所とを経験したメリットはあります。特に、企業の知財実務には時期によって波がある一方、知財担当者をその波に合わせて増減させることは雇用の関係もあって難しいと思います。この辺は、企業知財担当者経験者だからこそお助けできる業務があると思います。特に、規模のそれほど大きくない企業知財部門の方にはメリットがあるのだと思います。この辺のサービスの詳細については、直接メールでお問い合わせいただければ詳細にご説明します。

…と言うことで、実に我田引水の記事になりました。たまにはいいですよねscissors

IT産業と自動車産業とから始まってのとりとめのない話

本日は、とりとめのない技術経営的なお話を。

最近、IT企業が自動車産業に進出するという話を夙に聞くようになっています。

考えてみると、自動車ってメカの塊という印象があるのですが、実はエンジン制御も含めて電気・電子的なウェイトは非常に高まっています。特に、ハイブリッド車は非常に細かい電子制御(ちと古い言い方ですね)をしてますので、ある意味、優秀なパソコンでハイブリッド車が動いていると言っても全く問題ないと思います。ただ、ECUと呼ばれる電子頭脳や、車内に張り巡らされたセンサー等とECUとを結ぶワイヤハーネスは丁寧に隠されていますから、乗車しただけでは全くわかりません。

しかも、いわゆる高度道路交通システム(ITS)への準備が着々と進められていますし、ITSに先立ってカーナビが通信機能を有するようになることで、カーナビを含めた車載機器がインターネットに容易に接続されるようになり、オープンなネットワークの一端末として自動車が位置づけられるようになっています。東日本大震災後に、どの道路が通行可能かという情報が、特定の自動車会社に搭載されていた車載機器の通行情報から分かるようになった、というニュースがありましたが、この辺りは自動車がネットワーク上でどのように位置づけられているかという事実を如実に表していると思います。

さらには、自動車、特に(プラグイン)ハイブリッド車はいわゆるスマートグリッドを構成する重要な要素になりつつあります。こういった傾向は、電気自動車になれば全ての制御が電気・電子的に行われるわけですから、さらに強まります。

IT産業も、スマホに搭載されたカーナビアプリが車載機器であるカーナビと同様の機能を持つに至ったことから分かるように、自動車産業は実に有力な市場であることが十分認識されていると思います。

とは言え、自動車産業には結構特殊な事情があるとも思います。それは、安全性確保が絶対的命題であるということです。PCレベルであると、何か不具合があればPCを再起動すればいいという風潮が未だに残っている気がしますが、自動車の走行制御において何かあったら再起動という考え方は絶対許されないと思います。再起動している間に走行制御が何もできなければ、その間に事故が発生してしまうでしょう。現状のIT産業が容易に参入可能な領域、例えばカーナビアプリであれば、仮に不具合があった場合でもそのことによる影響は限定的だと思いますが、例えばECUのOSを担当するような場合は、robustnessが徹底的に求められるわけです。

IT産業において、例えば基幹システムのrobustnessは冗長性(多重性)と分散処理とバックアップにより実現されると思っていますが、車載機器において多重性は実現できても分散処理するにはハードウェアが不足するように思います。また、自動車は基本的にスタンドアロンで動作すべきものですから、バックアップがあったところで切替に時間がかかったのではあまり意味がありません。

こう考えると、IT産業が自動車産業に進出する際にはかなり慎重な設計等を行う必要があるように思います。しかし、慎重な設計は、一方で対応の迅速性や柔軟性を損なうこともあり得ますから、IT産業がそれまで直面してきた手法がどこまで通用するか、何とも分からないところがあります。

さて、自動車の走行制御であると安全性確保が絶対的命題であるわけですが、自動車を巡る領域であれば、若干のtry and errorが許容されるようにも思います。ある新聞記事で、中国ではIT産業がタクシー迎車システムの開発に鎬を削っているという話が紹介されていました。主に2つの企業が先を争って新機能追加を行っているらしく、従って時に見切り発車の部分があるけれど、それは対応の早さで補っているということになるようです。ある意味、ユーザー=消費者が実験台になっているということです。

日本だと、タクシー迎車システムを立ち上げるとなれば様々な実証実験を繰り返した上で不具合を徹底的に潰し、一定のレベルに達しないとリリースできないだろうと思います(タクシー迎車システム自体は既に稼働してますけどね)。これは、日本のユーザー=消費者が、比較的些細な不具合であっても許容する範囲が(中国に比較して)狭いんだろうと思うので、完成度を高める必要がどうしても出てくるんだろうと思います。

この辺り、日本と中国の現時点でのイノベーションモデルの差があるように思います。つまり、中国の場合、数多くの競業者が時間を競って新事業を立ち上げ、try and errorの結果、敗者の死屍累々の上にごく少数の勝者が残り、結果としてその勝者は国際競争力をその時点で獲得しているわけです。翻って現在の日本の場合、様々なシチュエーションを念頭に置いて慎重な開発を継続し、リリース当初から完成度の非常に高いサービスを提供しています。そして、日本風のイノベーションモデルがスピード感を持って実施されていれば問題がないのですが…

ただ、こういった現在の日本のイノベーションモデルは、随分前からそうだったわけではないと思います。我々が現在見ているestablishedな企業のうち、かなりの企業は戦後すぐの段階では比較的小規模な企業であり、数多くの大規模、小規模企業が入り乱れて国内市場で苛烈な競争を行い、結果的に幾つかの企業が生き残ったのだと思っています。例えば戦後すぐの自動車産業、オートバイ(オート二輪車でもいいですね)産業などがいい例だと思います。家電・AV産業の場合、戦前からの大企業が何社かおられたので全てが当てはまるわけではないですが、国内での競争の結果、自然と国際競争力を身につけたという点では当てはまると思っています。

翻って、では今の日本のイノベーションモデルはどうあるべきか、について明確な答えがないのですが、上に書いた日本のユーザー=消費者の厳しい目がある以上、破壊的イノベーションを当初から目指すよりも、ベンチャー企業であっても高品質な製品・サービスを継続的に提供する方向性は維持すべきなんではないかと思っています。時に過剰品質であると批判されますが、仕向地のマーケットリサーチを精密に行うことでミスマッチをできるだけ減らす努力は必要であるとしても、高品質というキーワードは日本の売りなのだと思っています。

本当にとりとめのない話ですが、こんなところで。

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