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我田引水なはなし

本日はちと我田引水の記事を。たまには、ということでお許し下さいm(_ _)m。

何回もこのBLOGで書いているので、飽きていらっしゃる方もおられるかと思いますが、私は知財業界に属している今までの中で、都合2つの企業知財部門に属し、特許事務所の数はそれ以上coldsweats01というキャリアを持っています。しかも、特許事務所業界はある意味出戻りというcoldsweats02。こういった、企業知財部門と特許事務所とを往復した人はそんなにいらっしゃらないように思っています。当然、そういったキャリアがあることで偉そうにするつもりはありません。

振り返ってみると、今でこそ比較的あり得る話になりましたが、特許事務所から企業知財部門への転職(この場合は必然的に中途採用)というキャリアパスが広く認知され、企業知財部門側が特許事務所経験者に対して門戸を比較的広く開け放つようになったのはここ10年程度のことであると思っています。
企業知財部門は、新卒採用や社内の部署移動といったルートはあったものの、他企業からの中途採用にはあまり積極的でなかったと記憶しています。それは、もしかしたら企業の知的財産部門に属する人数に大幅な増加を必要とする事情がなく、言い換えれば即戦力としての中途採用により人材を確保する必要があまりなかったのだろうと思います。企業側も、そもそも中途採用した人材をどのように処遇するか、より細かくは、企業内のキャリアパスが新卒採用を前提としていて、中途採用した人材をどのようにこのキャリアパス内で位置付けるか、があまり明確でなかったのかもしれません。だいぶ前に、私が中途採用で管理職待遇になったことを伝えると、ある企業の知財部門に所属する人が「自分の会社ではそんなことはないですね」と仰っていました。多分、その会社も、今はそういった待遇をすることはないと思っています。

とは言え、企業知財部門と特許事務所とを往復する方はそれほどいらっしゃらない(少なくとも私の周囲ではお一方しか存じ上げません)ようです。

では、企業知財部門と特許事務所とを経験するメリットは何であるか、と問われると、私が真っ先にあげるのは、企業知財部門の立場と特許事務所の立場とを経験することで、一方から他方へのコミュニケーションをより円滑にすることができることではないかと思っています。このメリット自体は、私もこのBLOGで取り上げたことがあると思います。

例えば、私が最初に勤務した企業は、私が中途採用された時に知的財産部門を正式に立ち上げたばかりで、企業内への知的財産マインド定着、知的財産部門の体制作り等、産みの苦しみを味わってきました(この辺りのお話しは、いずれまとめようかと思っています)。従って、技術者から発明報告書が提出されるという体制を作り上げるにも、まずは知的財産マインドの普及から始める必要がありました。とは言え、新規なアイデアは社内で次々と生まれてきていますので、知財担当者側が開発部門を行脚して、どのようなプロジェクトが進んでいるのか、そして、そのプロジェクトにどのような新規なアイデアがあるのかを聞いて回る作業をしていました。幸いなことに、企業の事業範囲はそれほど広いものではなく、先行技術もだいたい頭の中に入っていましたので、発明者から話を聞けば、新規なポイントを抽出してどのように出願するかというプランは立ちます。
一番の難所は、発明のポイントが明確になったとは言え、その内容をどのように出願代理を依頼する特許事務所に伝えるかということです。発明者は新規プロジェクトに係りきりで、特許出願の準備に割ける時間も限られていますし、そもそも、私が入社した当初は、特許出願に関与した発明者自体がごく限られていましたから、様式の整った提案書を書くことのハードルが高かっただろうと思います。
そこで、(こんなことはどなたもやっておられると思いますが)発明者から聞いた内容を元に、発明者に、既にある範囲の中で必要最低限の図面等を提出していただき、あとの文章なりフローチャートは私が作成し、この内容を発明者に確認していただいた上で提案書として仕上げ、特許事務所に出願代理を依頼していました。
一方、特許事務所も、内容や様式が整った発明提案書に対して独自性を追加することが得意な特許事務所もありますし、全くのヒアリングだけで明細書を作成することが得意な特許事務所もあります。これらは、いずれが良い/悪いということではなく、特許事務所の特色と言えるのだと思っています。私は、ヒアリングからでもきちんとした明細書が作成できる特色を有する知人弁理士に出願代理をお願いし、発明提案書に内容の不備があってもヒアリングでこれを補ってもらえることを期待して、多くの特許出願を行ってきました。

この時のコミュニケーションを円滑にする工夫としては、特許事務所が明細書を作成するにあたってどのような資料が必要か、また、ヒアリングでどのようなことがポイントになるかということを知っていましたので、発明者と特許事務所弁理士との間で、ある意味で通訳のようにして相互のコミュニケーションが円滑になることを助け、また、発明のポイントを的確に抽出し、このポイントに基づいて出願するのであればこのような資料が必要になるであろうことを事前に推測し、発明者に資料作成を依頼し、時間がなければ自分で作成したことが挙げられます。明細書のシナリオを事前に立て、このシナリオには何が必要かを考え、特許事務所側の負担をできるだけ軽減するとともに、出来上がった明細書の質を向上するには、こういった手間が必要だと考えたのです。とは言え、こういった作業はどの企業の知財担当者も実践しておられることだと思っています。

一方で、自分自身が既に明細書のシナリオを立案していますので、このシナリオに沿った一定の質が担保できていない明細書草案が特許事務所から納品されてきた場合、企業側も特許事務所側も手間が増えることになります。この意味から、上にも書いたように、出願代理をお願いする特許事務所側も相応の力量を持っている特許事務所を事前に選択し、良い意味での緊張感を持続できるようにチェックを行ってきました。その分、特許事務所側にかなりの負担を強いることにもなったかと思いますが、双方「意気に感じる」仕事ができていたのではないかと思っています。

一方、私は現在特許事務所に勤務して、クライアント様からの出願代理等を受任して仕事をしています。自分が特許事務所に勤務する立場になって、上に書いたコミュニケーション云々という観点から心がけていることとして、クライアント様の立場に立って仕事をする、という、文章にしてしまうと至極真っ当なことになります。
自分が企業知財担当者になって色々とわかったことの一つとして、理想的な仕事は質×時間×金銭のかけ算で最大のアウトプットを得られるものだということです。質については最善である必要は常になく、その発明について企業が求めている明細書の質、ということです。時間は基本的にASAPであることが望ましいです。金銭については、安価であることが基本的に望まれますが、出願代理業務の場合、安価であることは時間をかけずに作業を行うことにつながりかねませんので、その発明について企業が求める質を維持した中での安価、ということになります。
例えば、クライアントから提出された発明提案書の出来がよく、特許事務所側には全体的な見直しをした上で早期に出願を希望された場合、特許事務所側が改めて先行技術調査を行い、発明提案書に記載されている先行技術よりも適切な先行技術を発見し、これに基づいて明細書のシナリオを書き直してしまったことがあったとします。この行為自体は明細書の質向上に寄与していて、一見すると特許事務所側が大きな付加価値を提供しているように見えますが、必ずしもそうではない(むしろそうならない)ことが多いと思います。厳しい言い方をすれば、どのような内容で特許出願をするかについては社内手続(時に決裁手続)を経ていることが多いですから、先行技術が変われば明細書のシナリオも大きく変わり、厳密に言えば再度変更された明細書のシナリオについて社内手続をする必要が出てきます。さらに言えば、クライアントは様々な事情があってその先行技術をreferしているのかもしれない、などなど、クライアントのためと思って行ったことは、実はクライアントにとってためにならない可能性が高いです。
こういった、クライアントのためを思って付加価値を提供しようとする方は、実は企業知財担当経験者で特許事務所に移られた方であることが時々あります。つまり、企業知財担当者の頃は自分の差配により明細書のシナリオを決めていて、その癖が特許事務所に移られても抜けない、ということがあり得ます。
どのような出願においても、クライアントは明確な意味づけを持って出願依頼をしています。そして、その意味づけをクライアントに常に確認できるとは限りません。この場合、特許事務所としては、提供されている情報に基づいて、そして、時に提供されている情報に「限って」出願代理手続を粛々と進めることが求められます。この辺りは、クライアントが特許事務所に何を期待しているかを的確に把握しないと、その加減が難しいです。加えて、私は、期待されている仕事の「やや上」を狙って仕事をするように心がけています。期待されている仕事をするのは当たり前で、「やや上」のレベルの仕事をすることで、将来の予測も含めてクライアントの「ためになる」仕事ができるのだと思っています。この辺りになると、経験が物を言う領域だと思っています。

他にも、企業知財担当者と特許事務所とを経験したメリットはあります。特に、企業の知財実務には時期によって波がある一方、知財担当者をその波に合わせて増減させることは雇用の関係もあって難しいと思います。この辺は、企業知財担当者経験者だからこそお助けできる業務があると思います。特に、規模のそれほど大きくない企業知財部門の方にはメリットがあるのだと思います。この辺のサービスの詳細については、直接メールでお問い合わせいただければ詳細にご説明します。

…と言うことで、実に我田引水の記事になりました。たまにはいいですよねscissors

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コメント

良いクライアントが見つかると良いですね。
自分の経験ですと、
意外と、質問もせず、出願原稿を作成する事務所が多いと感じてます。
なぜか、知財はやはり人件費の関係かなと思っています。1人あたりの生産性を
あげようととすると、とりあえず、依頼人からの原稿をベースに出願原稿を作成してしまう。
そのような感じを持っています。
したがって、依頼人とコンタクトを取る事務所は良い事務所だと思います。
では。。

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