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テレビ事業の未来はどっちだ(謎)

本日は久しぶりにMOT的な雑談を。

日本の電機メーカー、特にAV機器を主力とするメーカーは、かなり決算の数字が苦戦しているようです。その大きな原因となっているのがテレビ事業の不振みたいです。日本の電機メーカーにとってテレビ事業は、グローバルな売り上げをもたらしてくれたエース級の存在だったと思うので、何故、そのテレビ事業が不振なのか、あれこれと報道しているようです。

日本の電機メーカーのテレビ事業の不振の原因を、韓国メーカー、つまりサムスンとLGの躍進に求めるマスコミが多いだろうと思います。確かに、世界的なシェアでみれば、サムスンとLGが上位を占めています(結構最新のデータはこちら)。しかし、理由はそれだけなのでしょうか。

このことを考えるために、改めてテレビを見るのはどういったシチュエーションなのか、何故、みんなテレビを見るのかを考えてみます。テレビの黎明期は、一家に一台のテレビがあり、家族団欒の風景の中に(しかも中央に)テレビがあったように思います。次に、若年層を中心に、自分の部屋にもテレビを持つ時代、つまり、一人に一台のテレビの時代が訪れます。家族全員で見る、つまり居間にあるテレビ以外に、子供が自分の部屋で見るテレビがある時代です。若年層の一人暮らしの部屋にもテレビが必ずあった時代です。

そうこうしているうちに、日本では若年層を中心にテレビを見る機会が減ってきました。その背景にはネット社会の発展やらテレビのコンテンツの魅力が減退したと言われていることやらがあると思います。一方で、世の中はケーブルテレビ、BS、CSを中心に急速に多チャンネル化が進んできました。さらに、Chromecastのような機器が出現したことで、ネットの画像をテレビで視聴することもできるようになりました。

このように、今までのようにテレビでニュースやバラエティを見る頻度が、特に若年層で減少傾向にあるだろうと思う一方、テレビで多種多様なコンテンツを視聴できる環境が整ってきています。

とは言え、上に書いた事情は、主に日本の事情について説明したもので、発展途上国ではまだまだ一家に一台のテレビのところも多いですし、世界的規模で見ると、ようやくブラウン管テレビの出番がだいぶ少なくなり、いわゆる薄型テレビの普及が始まったところもかなりあります。

日本にいると、やれ3Dだ、やれ4Kだという最先端技術の話しか聞こえてこないのですが、世界的には実に多種多様な視聴形態があり、それに伴ってどのような仕様のテレビが売れるかも実に多種多様です。TVメーカーは、こういった多種多様なニーズにどのように応えていくかが勝負になります。

一方で、地上デジタル放送も世界的にだいぶ普及してきましたし、ディスプレイもデジタル駆動が可能なものばかりになりましたので、TVもフルデジタル化がされたと言えます。デジタル化のメリットは、製造時の微調整を可能な限り少なくした均一化した製造が可能になることでもある一方、一定の回路がパッケージ化されたものを組み合わせるだけで(ちょっと極端な言い方ですが)ある程度の寄せ集めでTVが製造できてしまうこともあります。このところのTVの極端な低価格化の原因は、一つはサイズの大きい液晶パネル等が安価に提供できていることもありますが、また、回路自体の標準化、パッケージ化が進んだことで、特別な機能を搭載しなければ、チップの組み合わせでTVが製造できてしまうこともあると思っています。

TV製造のハードルが低くなったことで、様々なメーカーがTVに参入しています。デジタル放送の範囲であれば画質は一定以上のものが保証できますので、TVを視聴するということだけを考えれば、価格の安いものを選ぶのが消費者の常でしょう。

では、日本の電機メーカーの話に戻って、日本の電機メーカーの売りは何かと言えば、上に書いたような新参者(ちと失礼な言い方ですが)が製造したTVよりも「高画質、高機能」ということだと思っています。日本の電機メーカーも価格重視の製品を製造することは可能ですが、しかしながら、製造コストや販管費が全般的に割高になってしまうこともあり、価格競争をすると不利な面は否めません。

韓国メーカーの場合、日本メーカーほどの高品質を目指すのではなく、そこそこ高品質でしかも日本メーカーより安価な製品を提供しているという話を聞いたことがあります。これであれば、現地の人からすると「手に届く高級品」を提供しているメーカーになれ、ブランドイメージも高く維持できますし、売り上げも確保できます。

テレビ事業には、上に書いたような様々な課題があり、日本メーカーとしてどの方向に進むべきか、なかなか難しい問題が横たわっている気がします。そもそも、テレビ自体がどの方向に発展するか、予想することも難しいと思います。

現在、最先端技術として提供されているのは3D、4Kといったところだと思います。3Dについては少々先細りの感がありますが、それは偏にコンテンツ不足にあるんだろうと私は思っています。つまり、現時点で3Dで視聴できるのは一部の映画コンテンツ等に限定され、放送波についてはまだ試行段階に止まっています(Wikipedia参照)。つまり、3Dで視聴しようにも放送波しか視聴しない人にとっては何も3Dになっていないわけです。4Kも似たような状況にあると思います。多分、ブラジルワールドカップは4K対応機器で録画しているはずなので、放送局側には既にそれなりの4Kコンテンツがあります。問題は、それをどうやって視聴するかです。まだ日本では地上波で4K対応の放送がされていません(Wikipedia参照)ので、機器はあるもののなかなか一般視聴者が4K画像を視聴するまでには至っていません。

また、Chromecastの発売で一気に身近になったネットテレビと呼ばれるものも、(貧弱ではあったものの)TVには随分前からブラウザが標準搭載されており、TVでネットコンテンツを視聴することはできたわけです。Chromecastが注目されているのは、スマホ等で視聴できるフルHDコンテンツを、そのままの解像度で簡単にTVで見られるということにあると思っています。

本来、ネットテレビの最大の利点は放送と通信との融合にあると思っています。スマホの画像をTVで見られるというのは、既存の技術の延長線にありますし、何故スマホの画像をTVで「みんなで」視聴するかというシチュエーションを考えると、絶対的に有利なメリットはないように思っています。放送に対するinteractionを通信で行える世界を提供するTVが次世代TVなのだろうと思うのです。

とは言え、現時点では放送と通信との融合による明確なメリットをどのTVメーカーも提供できていないように思います。あと、放送業界と通信業界との間に微妙な距離があるようにも思います。

特許文献レベルでは、実はネットテレビに関する特許出願が数多く出願されています。私から見て面白いアイデアが多数存在するのですが、現時点ではほとんど実用化されていません。ユーザーに対する訴求力の問題なのか、時期尚早と判断されているのか、本当のところは闇の中なのですが…

とは言え、ネットテレビについてユーザーの支持が得られる製品を日本のメーカーが作り上げることができるならば、それは大きなAdvantageになるのだと思っています。

実は、TV上で様々なネットコンテンツが視聴可能である環境は、中国が既に一般化してしまっています(例えばこの記事)に紹介されているように)。そして、仮に中国初のネットテレビが世界的にde factoの標準になってしまった場合、日本メーカーは様々な先進的取り組みをしていながら、中国の後塵を拝するかもしれないのです。そうならないためにも、日本メーカーの今ひとつの頑張りを望みたいところです。

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