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iPhone、サムスン、そして山塞機(謎)

本日は、あんまり知財に関係ない話を徒然と。ざっくり書いてますので、参考文献が幾つもあるんですが、ほとんどすっ飛ばしてますcoldsweats01 あと、かなり断定的に書いてますので、お気に召さない方も結構いらっしゃるかと思いますので、予めお詫びをm(__)m

数日前、元サムスンの日本人の方が書かれたMOT的な記事が、私のTLで少し話題になっていました。詳細は記事をご覧になっていただくとして、私なりに要約すると、日本の電機メーカーの製品は機能が過剰であるので、サムスンはこの機能をリバースエンジニアリング(筆者の方はこれもリバースエンジニアリングだと仰っています)して、仕向地に必要な機能のみを再装備した製品を製造している、これがサムスン流のモノ作りだ、成功の要因だ、と仰っています。

この説は、以前から私のBLOG記事で時々取り上げている、例えば湯之上隆氏が主張されている日本の半導体メーカーの衰退の原因である過剰品質と通じるところでもあり、また、国毎のマーケティングを明確に行った結果としての商品企画のやり方とも捉えられますから、納得のゆくところです。しかし、私がさらに考えるに、このサムスンの成功体験が、これから(もしかしたら既に)のサムスンの苦境を招く原因になるのではないかと思っています。

その苦境の原因であると私が考えるのが、Apple社のiPhoneを初めとした製品及びその製品を製造するに当たっての商品企画のやり方です。私が考えるに、iPhoneやiPadは、機能の積み上げから商品企画がされているのではなく、単一の統一した世界観(そしてそれは単一の人間(Steve Jobs)が最終的にsuperviseする)を商品に具現化するための商品企画であり、各々の機能は、その世界観を達成するために創造されています。従って、サムスン流に従って個々の機能をリバースエンジニアリングした段階でその世界観は統一性を失い、個々の機能をいかに再装備しても、サムスン流の世界観を構築することはできないのです。否、そもそもサムスンにはそういった世界観という概念がないのだと思っています。「神は細部に宿る」という思想をサムスンは理解できていないのだと思います。

こう考えると、サムスンは、iPhoneやiPadをベンチマークとして取り上げた時点で今後訪れるであろう苦境に至る原因を作ったと言えます。いくら機能を積み上げ、個々の機能をbrush upしても、「こんなに便利な製品を作りました」というサムスンのメッセージは、いずれ到来するであろうライバルの中に埋もれ行く可能性を示しています。

こんなことを考えているのは、パクリ品として散々批判されてきた中国の山塞機の中から、新しいイノベーションの芽が出ているだろうと思っているからです。元々、私は、中国の山塞機は中国流イノベーションの表れだと思っていました。パクリ品といえ、パクリ品間の競争は過当なものです。そして、そういった過当競争の中で勝ち残ったメーカーは、実は国際競争力を十分備えたものになれる可能性があります。

丁度戦後、日本では雨後の竹の子のように原動機付き自転車を製造したメーカーが多数出現しました。その中で勝ち残ったメーカーは、結果的にバイクの世界市場を席巻しました。電機メーカーは全体的に大規模な、しかも戦前からの伝統的メーカーがかなり多かったのですが、それでも、国内市場での熾烈な争いの結果、世界的評価を得るにまで至りました。

中国の山塞機メーカーを日本のそれと同列に取り扱うのはかなり乱暴な議論なのですが、国内市場での競争力獲得が国際競争力を結果的に獲得するだろう道筋は似ていると言えます。

そんな中国の携帯電話メーカーで、国際競争力を獲得しているのではないかと私が考えているのがシャオミ(小米)です。シャオミはiPhoneみたいにスタイリッシュでかつ高機能な端末を製造し、しかも、iPhoneより圧倒的に安価です。シャオミの社長はSteve Jobs的なプレゼンをし、また、カリスマ的であるらしいです。こうなると、サムスンは、ベンチマークしていたiPhoneにより似た端末がより安価で提供される中で、中途半端な位置付けにならざるを得ません。

では、山塞機がこんなに安価に携帯端末を製造できてしまうのは何故か、そこには台湾メーカーのMediaTekという存在があります。MediaTekは携帯電話に必要な機能を凝縮したチップを安価に提供しています。なので、山塞機メーカーは、このMediaTek社のチップを使えば結構簡単に携帯端末を製造することができてしまいます。

ここで一つ疑問に思うことは、携帯端末には標準化技術を含む多数の特許が存在します。従って、普通に携帯端末を製造するとライセンス料がかなりの額になるのではないかと想像できます。このからくりの裏にはQualcomm社がいるようです。Qualcomm社はMediaTek社に対して自社の特許をライセンスしているようです。何故Qualcomm社がMediaTek社にライセンスしているかというと、Qualcomm社からすると中国の山塞機メーカーに対して個別にライセンスする手間を省くために、この山塞機メーカーがこぞって採用しているMediaTek社のチップに対してライセンスをし、その代わりにMediaTek社のチップを採用している中国メーカーの情報をQualcomm社に提供する約束をしたようです。これならば、Qualcomm社は実利を取ることができ、しかも中国メーカーの情報を簡単に入手できるわけです。とは言え、最近はこのスキームもちとうまく行っていないという話もあるみたいですが。

Qualcomm社の特許に関する手法は時々取り上げられている方がおられるのですが、Mediatek社のこの手法について研究をされている方はほとんどいないようで、私個人としては何故だろうと思っています。ちなみに、上でご紹介した湯之上隆氏は、このところMediaTek社の戦略を取り上げた記事を幾つか書かれてます(記事1記事2)。

加えて、シャオミの場合、いわゆるファブレスメーカーとしてアセットライトな経営をしているようです。このやり方は、正にAppleが実現したやり方で、Foxconn社などのEMSを利用して安価で高品質な製品を消費者に提供しつつ高利益を実現する手法です。シャオミからすれば、お手本は既にAppleが提供し、しかもチップはより安価に実現できる(機能的に同等であるかどうかは何とも言えませんが)メリットがあるわけです。

振り返って、サムスンはシャオミと戦うことができるだろうか…なかなか難しいと思います。少なくとも中国市場ではシャオミのほうが有利でしょう。先進国ではサムスンの知名度が大きく優っていますから優位は揺るがないと思いますが、一方でサムスンはiPhoneに追いつくことは難しいでしょう。

サムスンに対する私の見通しは悲観的に過ぎるかもしれません。しかし、サムスンの牙城に挑戦する有力な挑戦者が出現したことは事実だと私は思っています。これから、どうなるか。

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