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2014年10月

日本人とベンチャー雑感

Facebookに書こうかとも思ったんですが、結構長くなりそうなのでBLOGでhappy01

日本人は○○である、という分析は一筋縄でいかないな、と思うことがあります。例えば、日本人は勤勉で一つの道を究めるのが得意という言い方があります。この説に依れば、日本人は一つところに住み、自分の天職ともいえる職業に一心不乱に打ち込むのが得意、という言い方にもつながりそうです。当然、そんなことはないと反論するのは比較的簡単です。曰く、坂本龍馬はどうであったか。戦前の世界を一時期ではあっても一世を風靡した鈴木商店はどうであったか。さらに、戦前から戦後にかけてハワイ、南米に移住した移民のみなさんはどうであったか。日本人は農耕民族であるからという説明がされることが多いですが、日本人が定住傾向が強いであろう農耕民族ばかりであるならば、海を渡って活躍する気概を持つ人々は日本人ではないのか。

一方で、海外に目を向けた人々や企業のみが成功しているとも言えないと思っています。例えば、ソニーやホンダは非常に早くから海外市場の重要性を認識し、企業の規模からすれば一歩間違えると無謀ともいえる時期に海外進出を果たしています。しかし、国内市場を重視した企業が成功していないわけではなく、例えば、松下電産(パナソニックですね)やトヨタ自工(意識して古い名称を使っています)は企業の歴史からすると海外進出をした時期がそんなに早くないと思っています。これら企業の売上高からみると、(結果的にこれら企業はいずれも海外での地歩を確かなものにしていますが)国内市場をまず重要視した企業が成功していないとは言えないでしょう。

で、こんなことを考えていると、巷間言われる「日本人はベンチャー志向ではない」という説は本当なんだろうかという気がしています。

日本人が「かつて」ベンチャー志向でなかったかと問われれば、答えはNOです。先程例示したホンダであれソニーであれ、発足当時はれっきとしたベンチャー企業です。そもそも、企業のスタート当初から大規模なものであったのは極めて例外(国策企業や民営化された企業のように予め成功がある程度予想されたもの、あるいは分割、M&Aされた企業などが多い)だと思っています。日本人に起業意識がないのかと言われれば、これもNOでしょう。

気にすべきは、最近の10年~20年くらいの期間において、若者を中心に内向き志向が高まっているのではないかという意見があり、また、この期間において成功をしたベンチャー企業の数がそれほどでもないという意見があることです。一方、米国では継続的に成功を遂げたベンチャー企業が輩出されています。このようなことを背景として、「日本人はベンチャー志向ではない」という言われ方がされることも承知しています。

上に書いたように、日本人を一律に、また均一に考えること自体はできないと思います。日本人の国民性からしてベンチャー志向ではないと断定することはできません。しかし日本初のベンチャー企業の成功例が最近ないのも事実だと思っています。

私のMOT社会人大学院時代の恩師は長年ベンチャー企業論を研究していて、この、「日本人はベンチャー志向ではない」という命題の検証を行っていたそうですが、大学院を退官されるときの記念講演で、「結果的に何が理由であるかは判然としない」という一応の結論に至ったそうです。

私がMOT社会人大学院に通っていた頃も、また、その後も、シリコンバレーを代表とするアメリカのベンチャー企業を産む(インキュベートする)環境と日本の環境との差についての研究があり、その中で、費用面(エンジェル投資家の存在など)、環境面(アントレプレナーを支える専門家集団など)の差異が指摘されていました。国主導の資金面でのサポートは、ここ10年間で様々な施策が採られており、また、日本におけるベンチャーキャピタルも(それなりに)頑張ってこられていると思っています。また、ベンチャー企業に従事する専門家、例えば会計・経理関係の人材や法律面をサポートする人材(弁護士など)も以前より充実していると思います。中小企業をとりまく団体(商工会議所など)ではベンチャー企業に対する様々なサポートをしていますし、セミナーも数多く開催されています。

こうなると、やはり、私の恩師が述べたように。最終的にはよくわからんという結論になりそうですし、日本人がrisk-takingではないという一律な言い方も納得のゆかないところです。

また、日本では起業できないがアメリカなどに行けば起業できるという言い方も、果たして本当だろうかとも思います。アメリカは全世界から優秀な人材が集合し、その中での切磋琢磨をします。結果、非常に優秀な人材のみが成功を勝ち得るのだと思います。つまり、成功者は相当なリスクを冒してその結果莫大なリターンを得ているのだと思うのです。日本では考えられないハイリスク・ハイリターンだということです。現状では、もし自分がそういった極端なハイリスク・ハイリターンを得ようと思うならばアメリカに渡ればいいことですし、まずは国内市場を固めて海外市場というシナリオを描くならば、それもまたいいでしょう。要は選択肢のそれぞれ一つということであるように思うのです。市場を見て行動するということはいずれも共通しています。

ただ…自動車産業であれ家電産業であれ、かつては国内市場において苛烈ともいえる市場争いをして競争力を磨き、その競争力をもって海外市場で一定の地歩を固めたとも言えます。現在の国内市場は全般的にそういった過酷な戦いを見ることがなくなってきています。それは、企業戦略論が精緻になった関係で、同一市場における国内企業のカニバリズムを避ける方向に企業が進んでいる結果かもしれません。ちょっと前の流行の言葉で言えば、レッドオーシャン戦略を採用する企業が極端に少なくなった、みなブルーオーシャン戦略を目指すようになった、と言えます。一方、前にご紹介した中国でのイノベーションは、いずれも国内市場における苛烈な戦いの勝者が世界的な勝者になりつつあると思っています(HuawaiとZTEの戦い然り、山塞機の中から生き残ったともいえる小米然り)。

こう考えてみると、身の程を知ることも非常に大事なんですが、身の程を超える勝負をしてこそ世界に打って出る体力を養うのだとも思います。まずは、自分自身がどの程度risk-takingできるかを認識することが大事ですね。

特許事務所の規模とメリット?

久し振りのBLOGですが、結構重たい話題ですcoldsweats01

自分は特許事務所を幾つか経験していて、しかも、大規模、中規模、小規模事務所もそれぞれ経験しています。この、大規模、中規模、小規模特許事務所の分け方も人によって違うと思うのですが、私は、大規模特許事務所は所員100人以上、小規模は10人未満、中規模はそれ以外、という分け方です。

で、クライアントからすると、大規模、中規模、小規模特許事務所のメリット及び心配な点(デメリットがあると出願代理を依頼しないですから「心配な点」という言い方をします)が何であるかを考えてみたいと思います。何となく考えると、大規模=安定感及び担当分野の広さという点からかなり有利なところがあるように見えますが、そんなことはないと思っています。

まず、大規模特許事務所について。

特許技術者の数が多い、しかも、技術分野を電気、機械、化学と大きく分けた場合、全ての技術分野において専門とする特許技術者がいることがほとんどだと思いますので、クライアントからすると、様々な事業分野があっても同一の特許事務所に依頼することができるメリットがあるように思います。つまり、技術分野毎にどの特許事務所に依頼するかという考えをしないでいいです。しかし、表向きはそういった考えができそうに思えますが、私が企業の知的財産担当者であった経験からすると、企業はかなり細かい技術分野毎にどの特許事務所が適切であるか(得意であるか)を考えて出願依頼をすることも結構ありますので、大規模特許事務所の間口の広さがそのままメリットになるとも言えません。特に、バイオ、技術標準に関わる通信技術など、化学、電気(通信)が専門であるから直ちに当該技術の専門であると言いがたい技術分野については、大規模特許事務所であっても数多くの特許技術者が所属するとは限りませんので、間口の広さが常にメリットになるわけではありません。
特許技術者の数が多いことによるメリットは他にもあります。クライアント側の都合で、比較的短期間に数多くの特許出願を完了して欲しいと依頼することがあります。大規模特許事務所であれば、特定のクライアントに対応する特許技術者を弾力的に対応させることができますので、こういった依頼案件の変動に比較的容易に対応することができます。ここでいう「弾力的」とは、通常そのクライアントを担当していない特許技術者が担当するということばかりでなく、通常そのクライアントを担当していても全ての期間において担当していない(つまり、複数のクライアントの担当をしている)特許技術者において、一定期間は特定クライアントの担当だけをする場合も含みます(大抵そちらの場合が多い)。
コスト面ではどうでしょうか。特許技術者が多いとともに、いわゆる事務方の人数も多くなります。当然、多くの事務方を多くの特許技術者の収入で支える構造になります。一見、これによりコストダウンが図れそうな気もするのですが、事務方の仕事は特許事務所毎に大きく異なるわけではない(特に出願、中間処理業務に絞って考えると)ので、多くの事務方でサポートすることによるコストダウンの効果は明確でないです。また、事務方の人間が多いから専門性が担保できるという議論も、中小規模特許事務所からすれば明確に反論したいところでしょうから(事務方の品質の重要性はどの特許事務所も明確に認識してますから)、これも全てが当てはまるとも思えません。取扱件数が多いことで、システム構築、維持に関する費用を件数単位で分配すると低廉になるという議論があるのですが、これも、規模に応じたシステムを構築すればよいことですし、システムの大小で事務方の品質の高低が決まるとも思えません。
明細書等を含めた庁提出の書類の品質の担保(特に複数担当者によるチェック、パートナーを含めた最終的な品質担保の体制)についても、大規模特許事務所であるから高品質、あるいは品質担保がやりやすいという議論も、自分がクライアントとして中小規模特許事務所に依頼した経験からしても、どうも当てはまらないと思っています。逆に、クライアント側が、大規模特許事務所だから品質担保ができるという印象を持っているならば、私は今小規模特許事務所に勤務している立場からすれば、明確に反論するでしょうし、百歩譲ってそういった印象を持たれているクライアントがいらっしゃるならば、そう思われない努力をするだけのことです。
庁提出の書類の品質担保について少しだけ付言します。大規模特許事務所及び中規模特許事務所の中には、パートナー制を採用してアソシエイトたる弁理士はパートナーの個別指導を受け、アソシエイトが作成する庁提出書類は全てパートナーのチェックを経てからクライアント及び特許庁に提出するという体制を取っておられる特許事務所があります。この体制自体は優れたものだと思っています。一方で、こういったパートナー制は小規模特許事務所でも採用しうるものですし、品質担保についてパートナーによるチェックが唯一の回答ではないと思っていますから、パートナーのチェックが絶対的なメリットとは考えにくいです。
大規模特許事務所は、数多くの出願案件を取り扱っていますので、手続等に関する例外的事例や、日本のクライアントがあまり出願していない外国への出願を取り扱う確率は全般的に高くなることが考えられます。このような例外的な案件に関する対応力をメリットと言うならば、それはそうかもしれません。あと、大規模特許事務所の場合、法律部門を併設している、さらには法律特許事務所として運営されていることが結構多いですから、権利行使から訴訟に至るまでの手続を、出願代理からシームレスに行えることも多いでしょう。同様に、大規模特許事務所は調査部門を併設していることが多いので、先行技術調査、クリアランス調査、無効資料調査も特許事務所に依頼でき、その結果を出願業務にフィードバックすることができることも多いでしょう。とは言え、中小規模特許事務所が調査部門を併設する、さらには中小規模特許事務所の特許技術者(含む弁理士)が特許調査に関する知識を十分有している場合も多くなってきていますから、調査から出願までを一気通貫に行えるというメリットは大規模特許事務所だけのものではなくなってきているように思います。

次に中規模特許事務所についてです。

上に書いた技術分野で考えると、電気、機械、化学の全ての技術分野に個々に対応する特許技術者が所属する中規模事務所は限定されると思います。私が所属した中規模事務所は、2つの技術分野に関する専門知識を有する特許技術者が所属しているか、3つの技術分野に対応する特許技術者は所属していても、どれか一つの技術分野に通暁した特許技術者の数がかなり少なかったです。ただ、中規模あるいは小規模特許事務所の場合、特定の技術分野に関する専門知識が突出している場合が結構あります。私が知っている、バイオ関係の特許出願について評価の高い特許事務所が3つありますが、その中の2事務所は中規模事務所に属します(とはいえ中規模の中でも結構規模は大きいですが)。この、特定の技術分野に強みを持つことは、クライアントに対するメリットになり得るでしょう。つまり、クライアントは、特定の技術分野に強みを持つ特許事務所には、その分野に絞って出願案件を依頼するインセンティブが働きます。とは言え、クライアントが特許事務所に出願案件を依頼する理由は色々とありますから、特定の技術分野における強みが明確でない場合でも出願を依頼されることは十分あります(むしろそちらの方が多数派)。
時期毎の出願依頼案件の変動にも、中規模事務所であれば対応が比較的容易であると思います。中規模事務所の場合、事務所単位でクライアントから出願代理を依頼される案件が相対的に小さいので、一人の特許技術者は幾つかのクライアントを担当していることが、大規模特許事務所よりも多いと経験上思っています。ですから、特許事務所全体として弾力的な対応ができやすいと思います。
コスト面において、中規模事務所がコスト高になるという理由は思い付きません。品質担保の問題も、中規模事務所であると特許事務所の所長が自ら品質管理を(ぎりぎり)できる範囲ですので、単一的な基準に基づく品質管理がしうると言えます。

最後に小規模特許事務所についてです。

小規模特許事務所の場合、特定の技術分野に強みがある、明細書の品質に特徴がある(品質というのは相対的評価になりますので、高低を議論するのは難しく、何らかの特徴をクライアントが評価していただける、ということだと思います)ことがメリットになりうると考えます。小規模特許事務所の場合、こういった明確な「売り」がないと特許事務所として生き残るのが難しくなっています。私の知っている範囲でも、特許調査をメインにして明細書作成については協力事務所に依頼する特許事務所や、技術標準に関する通信技術に特化した特許事務所、さらには中小企業(特に事務所がある地域を中心とした)のサポートに強みを持つ特許事務所などがあります。
また、小規模特許事務所の場合、個々のクライアントを大事にする必要が出てきますので、クライアントからの要望に迅速にかつフットワーク軽く対応することが多くなってくると思っています。当然、小規模特許事務所以外の特許事務所が、クライアントからの要望に迅速にかつフットワーク軽く対応できないとも思いませんが、小規模特許事務所では、一般的に事務所単位で考えるとクライアントの数が少なくなりますから、個々のクライアントを重要に考える割合が高くなってくることが多いです。とは言え、クライアントからの無理難題を小規模特許事務所なら何でも対応するかと言えば、そこには一定の限界がありますが。
コスト面については中規模事務所と同じですね。品質担保の問題も、小規模特許事務所であると所長なりパートナーの目の届くところで仕事が進んでいきますので、品質管理が行き届くことが多いと思います。
あと、段々と減ってきているのですが、特許事務所に所属する弁理士が所長先生お一方、という特許事務所(いわゆる一人事務所)があります。統計数字からすると、こういった経営形態の特許事務所が全国的には一番多いです。クライアントからすると、所長先生がお元気なうちはいいのですが、年齢を重ねてこられた場合、現在出願代理を依頼している案件をどこまで継続的に担当していただけるのだろうという懸念があります。このため、大規模クライアントであると、一人事務所には出願案件を依頼しない、という方針をとってるクライアントが幾つかあるようです。また、聞くところによると、クライアントからの要望に応じて一人事務所を合併したケースがあるようです。一人事務所にはそれなりの「心配な点」があるということです。

あと、大事なことが。私がライフワークとして推進している知的財産コンサルティングについては、私の考えでは大規模特許事務所、中規模特許事務所、小規模特許事務所のいずれであっても十分対応できると思います。そもそもコンサルティング業務はきわめて属人的なものですから、よほどの大プロジェクトでないとチームで対応することがありません。コンサルティング業務にたけた担当者がその特許事務所に所属するか否かが全てです。しかも、知的財産コンサルティング業務を十分遂行しうる担当者は、特許事務所業界全体でみると極めて少数派です。

以上、長々と説明してきましたが、特許事務所の規模毎にメリット及び心配な点がありますが、では、それが決定的なものかというとそれほどのことでもないように思います。これは、自分が今現在小規模特許事務所に所属していますから、少なくとも大規模特許事務所に負けないように仕事を進めているという自負心から、若干中小規模特許事務所に肩入れした議論をしたからかもしれません。
あと、特許事務所に勤務する人間からみたメリット及び心配な点というのも幾つかあるんですが、今回はその点については全く触れていません。というのも、勤務する側の懸念点等は事務所毎の個別の問題に帰着することが多いと思いますし、私自身がどれだけの数の特許事務所の個別事情を知っているかと言えば大した数でもないですから、あまり断定的なことは言わないのがよいと考えたからです。

かなり長文になりましたが、こんなところで。

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