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日本人とベンチャー雑感

Facebookに書こうかとも思ったんですが、結構長くなりそうなのでBLOGでhappy01

日本人は○○である、という分析は一筋縄でいかないな、と思うことがあります。例えば、日本人は勤勉で一つの道を究めるのが得意という言い方があります。この説に依れば、日本人は一つところに住み、自分の天職ともいえる職業に一心不乱に打ち込むのが得意、という言い方にもつながりそうです。当然、そんなことはないと反論するのは比較的簡単です。曰く、坂本龍馬はどうであったか。戦前の世界を一時期ではあっても一世を風靡した鈴木商店はどうであったか。さらに、戦前から戦後にかけてハワイ、南米に移住した移民のみなさんはどうであったか。日本人は農耕民族であるからという説明がされることが多いですが、日本人が定住傾向が強いであろう農耕民族ばかりであるならば、海を渡って活躍する気概を持つ人々は日本人ではないのか。

一方で、海外に目を向けた人々や企業のみが成功しているとも言えないと思っています。例えば、ソニーやホンダは非常に早くから海外市場の重要性を認識し、企業の規模からすれば一歩間違えると無謀ともいえる時期に海外進出を果たしています。しかし、国内市場を重視した企業が成功していないわけではなく、例えば、松下電産(パナソニックですね)やトヨタ自工(意識して古い名称を使っています)は企業の歴史からすると海外進出をした時期がそんなに早くないと思っています。これら企業の売上高からみると、(結果的にこれら企業はいずれも海外での地歩を確かなものにしていますが)国内市場をまず重要視した企業が成功していないとは言えないでしょう。

で、こんなことを考えていると、巷間言われる「日本人はベンチャー志向ではない」という説は本当なんだろうかという気がしています。

日本人が「かつて」ベンチャー志向でなかったかと問われれば、答えはNOです。先程例示したホンダであれソニーであれ、発足当時はれっきとしたベンチャー企業です。そもそも、企業のスタート当初から大規模なものであったのは極めて例外(国策企業や民営化された企業のように予め成功がある程度予想されたもの、あるいは分割、M&Aされた企業などが多い)だと思っています。日本人に起業意識がないのかと言われれば、これもNOでしょう。

気にすべきは、最近の10年~20年くらいの期間において、若者を中心に内向き志向が高まっているのではないかという意見があり、また、この期間において成功をしたベンチャー企業の数がそれほどでもないという意見があることです。一方、米国では継続的に成功を遂げたベンチャー企業が輩出されています。このようなことを背景として、「日本人はベンチャー志向ではない」という言われ方がされることも承知しています。

上に書いたように、日本人を一律に、また均一に考えること自体はできないと思います。日本人の国民性からしてベンチャー志向ではないと断定することはできません。しかし日本初のベンチャー企業の成功例が最近ないのも事実だと思っています。

私のMOT社会人大学院時代の恩師は長年ベンチャー企業論を研究していて、この、「日本人はベンチャー志向ではない」という命題の検証を行っていたそうですが、大学院を退官されるときの記念講演で、「結果的に何が理由であるかは判然としない」という一応の結論に至ったそうです。

私がMOT社会人大学院に通っていた頃も、また、その後も、シリコンバレーを代表とするアメリカのベンチャー企業を産む(インキュベートする)環境と日本の環境との差についての研究があり、その中で、費用面(エンジェル投資家の存在など)、環境面(アントレプレナーを支える専門家集団など)の差異が指摘されていました。国主導の資金面でのサポートは、ここ10年間で様々な施策が採られており、また、日本におけるベンチャーキャピタルも(それなりに)頑張ってこられていると思っています。また、ベンチャー企業に従事する専門家、例えば会計・経理関係の人材や法律面をサポートする人材(弁護士など)も以前より充実していると思います。中小企業をとりまく団体(商工会議所など)ではベンチャー企業に対する様々なサポートをしていますし、セミナーも数多く開催されています。

こうなると、やはり、私の恩師が述べたように。最終的にはよくわからんという結論になりそうですし、日本人がrisk-takingではないという一律な言い方も納得のゆかないところです。

また、日本では起業できないがアメリカなどに行けば起業できるという言い方も、果たして本当だろうかとも思います。アメリカは全世界から優秀な人材が集合し、その中での切磋琢磨をします。結果、非常に優秀な人材のみが成功を勝ち得るのだと思います。つまり、成功者は相当なリスクを冒してその結果莫大なリターンを得ているのだと思うのです。日本では考えられないハイリスク・ハイリターンだということです。現状では、もし自分がそういった極端なハイリスク・ハイリターンを得ようと思うならばアメリカに渡ればいいことですし、まずは国内市場を固めて海外市場というシナリオを描くならば、それもまたいいでしょう。要は選択肢のそれぞれ一つということであるように思うのです。市場を見て行動するということはいずれも共通しています。

ただ…自動車産業であれ家電産業であれ、かつては国内市場において苛烈ともいえる市場争いをして競争力を磨き、その競争力をもって海外市場で一定の地歩を固めたとも言えます。現在の国内市場は全般的にそういった過酷な戦いを見ることがなくなってきています。それは、企業戦略論が精緻になった関係で、同一市場における国内企業のカニバリズムを避ける方向に企業が進んでいる結果かもしれません。ちょっと前の流行の言葉で言えば、レッドオーシャン戦略を採用する企業が極端に少なくなった、みなブルーオーシャン戦略を目指すようになった、と言えます。一方、前にご紹介した中国でのイノベーションは、いずれも国内市場における苛烈な戦いの勝者が世界的な勝者になりつつあると思っています(HuawaiとZTEの戦い然り、山塞機の中から生き残ったともいえる小米然り)。

こう考えてみると、身の程を知ることも非常に大事なんですが、身の程を超える勝負をしてこそ世界に打って出る体力を養うのだとも思います。まずは、自分自身がどの程度risk-takingできるかを認識することが大事ですね。

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