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2015年3月

トヨタ自動車の特許公開に思うこと(備忘録的)

自分の記憶だと、今年になって全くBLOGを更新していませんでしたcoldsweats02。書くネタはあったんですが、どうも昨年末あたりからずっと公私共にバタバタしておりまして(でもそんなに稼いでいません)、文章をまとめる余裕がないままでおりました。今もまだその状況は継続しているのですが、そろそろネタで書くことを忘れそうなので、完璧な備忘録状態で(つまり全くまとまりのない状態で、しかも記事等の引用を抜かして)ひとまず一つのネタを書くことにします。

先日、トヨタ自動車が、燃料電池に関する自社特許を、申し出があった企業に対して最大20年間利用許諾をすることを発表しました。このトヨタ自動車の発表には、知財業界に限らず大きな反響があったようです。まだ、現実に何かが動いているようではないみたいですが、新しい動きと捉えていいのだと思っています。

私は現時点で自動車産業との接点はほとんどなく、従って、自動車産業における知的財産について専門家でも何でもないのですが、私が知っている範囲の知識から何が考えられるかを少し書いてみたいと思います。

私が第三者として自動車産業を見ていて独特だと思うことが、(自動車産業ですから当たり前なんですが)乗員の安全を第一に考えることです。このため、乗員の安全確保のための特許を取得した場合、例えばボルボが3点シートベルトの特許を無償公開したり、また、日産自動車がシートベルトのプリテンショナーに関する特許を広くライセンスしたり、と、他社からの求めがあればライセンス提供をする土壌があるようです。一方で、排気ガス規制のための特許(例えば本田技研工業のCCCVとか)やエンジンの振動音抑制の特許といった、乗員の安全確保に直接関係なく、また、その企業なり製品の差別化に大きく寄与する特許についてのライセンス提供はあまりない様子で、私が知っているのは、三菱自動車工業がサイレントシャフトという4気筒で6気筒並の静粛性を実現する機構についてポルシェがライセンスの提供を受けた、というものです。

また、自動車産業を構成する各社の間での特許訴訟はあまりないのですが、だからといって競業他社が自社特許を使用しているかどうかの検討はきっちりやっていないわけではない(私が伺ったのは特定の会社ですが)らしいです。また、商標(つまり車のネーミング)も、ストック商標レベルだと融通し合うことがあったみたいです。自動車産業における特許訴訟は、大抵の場合、古くから自動車を製造していない会社、例えば技術ベンチャーが大手自動車会社に特許権侵害訴訟を提起する場合が多い気がしています。最近だと、トヨタ自動車は結構長年にわたって米国で技術ベンチャーとハイブリッド技術に関する特許訴訟をしていた記憶があります。

最近の傾向として、標準化技術についても触れておかないといけないでしょう。とは言え、自動車産業と標準化技術というと、あまりピンとこない方もおられるかと思いますが、自動車は世界中で製造されていますし、数多くの企業が関与する技術でもありますから、標準化は避けて通れない問題です。例えば、車内Ethernetについても標準化がされていますが、日本の自動車メーカーは車内Ethernet技術について標準化のMajorを作ることはできなかったようです。そういった反省もあってか、電気自動車については日本の自動車メーカーは積極的に標準化作業に関与し、充電プラグの仕様についてはChadeMOがMajorになりそうです。とは言え、電機産業のようなパテントプールを用いたスキームは寡聞にして聞いていません。

さて、本題の燃料電池に関する特許権の公開です。ご存じの方も多いと思いますが、米国Tesla社は、自社所有の電気自動車に関する特許権を公開しています。トヨタ自動車の燃料電池特許権の公開もこの文脈で語られるのですが、私が考えるに、似ているところもあるが当然違うところもあるなぁ、と思っています。

 電気自動車の場合、実用化技術で考えると、日本の自動車メーカーと米国Tesla社とが双璧を為していると思います(つい最近、ドイツの自動車メーカーもぼちぼち電気自動車を発表していますが)。現在の電気自動車の最大の問題は航続距離の短さにあるので、インフラとして電気ステーションを多数配置することが求められています。しかしながら、政府を含めた行政として、電気自動車を奨励する(つまりは電気ステーションを行政がある程度の費用負担をして多数設ける)とまでは意思決定できておらず、それもあってか、思ったほどの普及がされていない(日産の電気自動車は予想をかなり下回る売り上げだったようです)のが実情です。私が考えるに、米国Tesla社の特許権公開は、電気自動車業界に活を入れるためのものではないか、と。米国Tesla社のCEOは、「特許権による独占は意味がない」といった発言をしたようですが、私はこの発言は単なるポーズであるように思えます。つまり、米国のIT業界を中心にフリーミアムに対する一定の支持があり、自分もフリーミアム的な考え方に賛同するというスタンスを取ることで、最終的に自社を含めた電気自動車の売り上げを向上させるのが目的であると。

トヨタ自動車の燃料電池車に関する特許権の公開は、年限が20年に限定されている、また、特許権の使用許諾を得るにはトヨタ自動車に連絡を取る必要があるなど、課されている条件から直ちに自動車製造メーカー各社に燃料電池車の技術開発を促す内容であることがわかります。トヨタ自動車は、ハイブリッドカー技術においては非常に多数の特許出願を行い、他社が容易に参入できない特許網を構築したと思うのですが、ハイブリッドカーの普及という側面からするとそれが正解であったのか。トヨタ自動車は、ハイブリッドカー技術を、電気自動車や燃料電池車までのつなぎと考えていた節があったと思っています。しかし、電気自動車のコア技術である電池(特にリチウムイオン電池)の性能向上(主に小型化だと思います)や、燃料電池そのものの性能向上が思ったように進まない中、トヨタ自動車として次世代の本命である燃料電池車の技術開発を他社に促すこと、それには、自社のみならず他社と協業する必要性を感じたのではないかと思います。

こういったトヨタ自動車の姿勢を、競業他社がどう見ているのか。一番面白かったのが、トヨタ自動車の特許権公開に関する発表を受けて、独VW社のCEOにインタビューしたところ、トヨタ自動車の燃料電池車に関する特許権の許諾を受けるか否かについては明確な答えをしていなかったのですが、その後、独VW社は、カナダのバラード社から燃料電池に関する特許権の許諾を受ける、という発表をしました。カナダのバラード社は、燃料電池に関する有力な特許を多数保有しています。つまり、独VW社は、トヨタ自動車と全く違う道を進むことを宣言したわけです。独VW社のCEOのインタビューでは、電気自動車の走行継続距離の短さを指摘し、電気自動車は都市を中心とした短距離運行が主で、燃料電池車は走行継続距離が長いこともあるので、都市と都市を結ぶ長距離運行にメリットがあるということを指摘していました。ヨーロッパの場合、EU域内において長距離走行をする機会が多いと思いますので、ある意味、本命は燃料電池車ということなのだと思います。こう考えると、VW社を含むヨーロッパ企業は実にしたたかであると思いました。

燃料電池車については、普及までに様々な壁があると思っています。個人的には、ハイブリッドカー技術のように早く身近なものになって欲しいと思っているのですが、それまでに、主に特許的な観点からどのような進捗があるのか、興味を持って見ていきたいと思っています(完璧に第三者的な言い方で、関係各位には申し訳ない限りですが)。

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