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”製造業のサービス化”の流れの中で、知財人財には何が求められるのか(仮)

ちと遅れましたが、今週月曜日に参加した研修会の話題について。

日本知財学会の第2回定例研究会「”製造業のサービス化”の流れの中で、知財人財には何が求められるのか(仮)」に参加して参りました。講師は、かの「技術力で勝る日本が、なぜ事業で負けるのか-画期的な新製品が惨敗する理由」の著者として知財業界では夙に著名な妹尾堅一郎先生です。

妹尾先生のご講義は、上に書いた著書を上梓された頃には数多く拝聴していたのですが、自分が特許事務所に転職して以降は、特許事務所の実務に関連する研修会に絞って参加していたため、久し振り(多分4年ほど)に拝聴しました。

内容は、上に書いたように「製造業のサービス化」というキーワードを中心に、インダストリー4.0やIoTの話題をご紹介いただき、その上で日本の産業はどの方向に進むべきかという、かなり経営戦略的な(その意味で知財とはダイレクトに結びつきにくい)話題について縦横無尽に論じていただきました。最終的には、この研究会が日本知財学会の知財人財育成研究分科会が主催する研究会であったため、知財人材の育成についてまで議論が進む予定であったようですが、実際には時間切れでなかなか議論が深まらずに終わってしまいました。

製造業のサービス化であれ、IoTであれ、産業自体が大きく変貌する(インダストリー4.0は言い換えれば第4次産業革命ということです)時代の中で、知財担当者も様々に知恵を巡らせ、さらには産業なり企業が進むべき方向を見いだしてそれに先んじることができる知財人材をどのように育成すべきかというのは、大きく言えば我々に課された課題であると思っています。

つまり、現行の知財制度は有体物に適用される無体物たる知的財産権を取り扱っているわけですが、有体物の特徴が情報という無体物に化体し(例えば、3Dプリンタを前提とすると、どう作るかではなくてどのような形状であるかを示す情報が重要であるということです)、さらに、それぞれのセンサなりCPUなり(ノードってことですね)が自律的に行動し、これらが緩やかに結合する(グリッドコンピューティングとも微妙に違うわけですが)システムにおいて、特許権を実施する主体は何であるか(システムであると全てのシステムについての特許権の実施が必要であるが、自律性を前提とすると「全て」という用語をどのように解釈すべきなのか)、などなど、特許権の実体をどのように把握して権利化し、これを行使するかについて悩ましい問題が出てきます。

例えば、3Dプリンタの登場により、CADデータ等が入手できれば、特徴的な機構(STF)を有する装置を家庭内で製造することができます。この場合、家庭内での実施は特許権の侵害に該当しませんから、どのような実施行為について権利侵害の網をかけるかについて考える必要があります。製造方法について特許権を取得しても、通常は3Dプリンタによる製造方法に係る請求項は立てていないでしょうし、立てたとしても製造方法そのものに特徴があるとは考えられません(3Dプリンタを使ったということだけしか特徴がない)。一番価値のあると思われるものは、3Dプリンタにより装置を製造するためのCADデータです。しかし、データそのものは特許権に馴染みません。仮定的な話として、少し工夫をしてプログラムに関する請求項を立てられたとしても、そこまで考えて請求項を立てている実務家はごく少ないでしょう。しかも、このプログラムと装置とそれぞれについて請求項を立てた場合、特許法37条の取扱はどうなるのでしょう。こうやって考えはじめるときりがないのです。

様々な知恵を絞り、しかも、システムでいえば上位レイヤーにおいて覇権を競う競業他社に対してどのような対抗策を取るか、こういった、ある意味での思考実験を行いうる知財人材をどう育成するか、これもまた難しい命題です。一つだけ言えることは、世の中で起こっていること全般について好奇心を持ち、さらに、(ちと古い用語ですが)ビジネスモデルを自ら立案し、あるいは、新規なビジネスモデルを即座に理解しうる柔軟性が必要なのだろうと思っています。好ましくは、マーケティングを含めた経営学に関する知識が要求されます。

大企業であると、様々な知識なり知恵は、複数人の総和(つまりチーム)により対応することができるわけですが、規模が小さい企業の場合、知財担当者がマルチな才能なり能力を持つことが要求されます。とは言え、一人の人間が獲得しうる知恵なり知識にはある程度の限界がありますから、簡単にはいきません。ものすごい大きな宿題をもらった気がしています。

こんなことを考えていると、やはり企業の知財管理の仕事って楽しいなぁ、と思うわけです。

あと、余談ですが、この研究会の運営側に私の知人が3人もおられて、何だか不思議な気持ちになりました。

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