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2016年3月

「知財戦略のススメ」を読んで

この記事はBLOGに掲載するかFacebookに掲載するか迷ったのですが、Facebookに投稿したところ、それほどでもないという話を聞いたので、BLOGにも公開します。

遅まきながら、鮫島先生と小林誠さんとの共著にかかる「知財戦略のススメ」を読了しました。内容はなかなかに刺激的で、鮫島先生のこれまでの業績の総まとめ的な内容と、ファイナンス系の内容とが合体した書籍でした。読まれる価値は非常にあると思います。

で、一点だけ気になったことがあったので、何となく補足的なお話を。

鮫島先生が執筆を担当されている様子の第3章「特許の権利行使と知財ファンド」で、米国の代表的なパテントトロールの特許保有状況が表形式で紹介されています(表3-2)。このデータは、今はRPXのサイトの一部になっているPatentfreedomというサイトから引用したもののようです(魚拓みたいなものがあったのでご紹介)。

このランキング、元々はNPE(Non-Practing Entity)というカテゴリーでまとめたもののようで、実は、パテントトロールと言ってしまっていいのかという営業主体も含まれているように思います。

例えば、このランキングの1位はIntellectual Venturesになっています。IVの実体はよく分かっていない(サイトを見ても発明投資ファンド=Inention Investment Fund)って何をしてるか何ともわからない)のですが、IV所有の特許に基づいて権利行使したこともあるらしい(ネットで一時期話題になったことがあります)ので、まぁ、広く捉えるとパテントトロールと思えなくもないです。その後、Winsconsin Alumni Research Foundationが登場します。WARFは、ざっくり言えば大学TLOですから(とはいえ、ものすごい巨額のライセンス収入を得ていますし、特許侵害訴訟も積極的にしていますので、日本における大学TLOのイメージとは随分違いますが)、アグレッシブではあるもののNPEにカテゴライズするのがいいのかなぁ、と思います。

Rockstar Consortiumも登場します。Rockstarについては、第5章「特許の権利行使と知財ファンド」で小林誠さんが結構詳しく紹介しているように、元々Nortelの特許ポートフォリオがパテントトロールに(特に分散されて)購入されてしまうと、特許訴訟リスクが増加するだろうことを怖れて、Google、Appleを含むIT系大企業が買収に動いたわけです。その後、Rockstarは第5章に紹介されているように一部の携帯端末企業に対して権利行使をしたようですから、この点「だけ」を取り上げると、パテントトロール「」な挙動をしたようにも思えます。とは言え、その後、RockstarはRPXに特許を売却してしまっていますから、このような流れをもってパテントトロールと言ってしまうと、Motorola Mobility特許を買収し、その後売却してしまったGoogleもパテントトロールになってしまいます。

さらに、Rambusもこのランキングに登場します。Rambusのこれまでの行動を肯定するわけではありませんが、Rambusも事業を行っていたわけで、パテントトロールと呼んでしまうことに結構な抵抗があります。

当然、鮫島先生が言及されているように、NPEとパテントトロールとの線引きは非常に難しいのですが、できたら、「パテントトロールを含むNPEの特許保有状況」という紹介が良かったのではないかなぁと思っています。当然、このことが書籍の有用性に与える影響なんてないわけですが。

ディープラーニングとイノベーションの不連続性

この文章と、この後にアップする文章は、Facebookに投稿したものの、この話題はBLOG向けだと思い直して、BLOGに投稿しています。私のFacebookをご覧になっている方は、ほとんど同じ内容ですので華麗にスルーしていただければ、と(^_^;)

ここ数日、ディープラーニング系の話題(特にGoogleの囲碁ソフト)が報道されていて、自分なりにディープラーニングを使った囲碁ソフトは、過去の名手とかを集積してこの名手を選ぶ手順についても過去の名人のそれを利用したもので、かつての囲碁ソフトは、可能性のある指し手について全て妥当性を検討していたから計算が発散していたのを、指し手の選定についても過去の名人のそれを参考にしているから、妥当な計算量に収めることができたのだろうと思っている。

で、自分の理解が正しいのならば、今回の囲碁ソフトは、過去の名人の知恵を総集して、考え得る最良の、つまり優れた名人を作り上げたものなのだろうと思っている。

これでふと思い出したのが、イノベーションの不連続性という問題だった。イノベーションという言葉の定義に若干の幅はあって、定義そのものについてここで議論することはないのだけど、イノベーションというからには、過去の技術からある程度の不連続性が必要なのではないかという話があったように覚えている。つまり、知財的な言い方をすれば、年月と共に技術は連続的に発展していくのだから、進歩性、つまり、連続的発展をする技術から一定のinventive step、言い換えれば一定の飛躍(これが不連続性ということ)がないと価値のあるもの(イノベーション)として認めないということになる。イノベーションに不連続性が必要であるとすると、イノベーションと呼べるものは結構少なくなってしまうだろうし、かのクリステンセン教授も、破壊的イノベーション(disruptive innovation)だけをイノベーションと呼んでいるわけではないから、この考え方は狭きに失するだろう。

とは言え、ディープラーニングによる人工知能は、その考え方まで人間を模倣したとしても、不連続性を有するイノベーションを生成することができるのか、何とも言えないところだろうと思う。つまり、inventive stepを生成する各種手法を学習した時、「正しい」不連続性を与える思考法を選択する基準をどうするかの問題が残るのだ。様々な解決手段をディープラーニングにより創出した時、どの解決手段が「適切」であるかをestimateする(つまりは最適な効果は何であるか)ことは、現状、人間しかし得ないことだろうと思う。効果を経済的に落とし込んだところで、実現しうる範囲内でのコストの極小値を与えるものと推測される解決手段を市場が受け入れるとは限らない。

学術も少し似たようなところがあって、例えば、アインシュタインは、真空中の光速度が一定という、ある種荒唐無稽とも思えた(光には相対速度という考え方が通じないということなのだから)仮定から特殊相対性理論を導くことができた。真空中の光速度が一定であるという仮定は、それまでの物理常識からすればかなり不連続的なものであったろうと思う。そして、その不連続的思考が科学技術の先端を大きく進めたわけである。

現時点では、ディープラーニングを用いた人工知能が人間の教師になれる可能性は低いと思っている。そして、もしかしたら、人工知能に対して教師役となりうることが、ある意味での人間の人間らしいことなのかもしれない。

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