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SW発明の特許適格性に関する覚え書き(汗)

本日も小ネタで。本当は、この間の人工知能ネタの続きを書く予定だったんですが、なかなか考えていると長くなりそうなので、まずは小ネタで(ってちっとも小ネタにならないかも)coldsweats01

本日は、こんなセミナーに参加してきました。まぁ、未だにいわゆるAlice判決が米国特許実務に与える影響はなかなかのもので(講師の吉田先生にも、セミナー後にこの点をお伺いしたら「まだまだ収まりませんねぇ」とのお言葉がcoldsweats02)、最新情報を入手するために参加してきました。

なかなか実務的に興味深いアドバイスを様々教えていただいて、有意義なセミナーでした。どんな内容だったかというのは、まぁ、セミナー参加者だけのものにするのがいいと思いますのでbleah、ここでは、講師の吉田先生が色々と悩んでおられたお話を。

Alice判決で引用したPrometheus(Mayo)判決での特許適格性判断のテスト(このテストは、USPTOの審査ガイドラインのフローチャートにもなっています)では、このフローチャートの流れに沿って説明すると、(A)101条法定の類型に該当するか、(B-1)自然法則、自然現象、抽象的アイデアのいずれかに該当するか、そして(B-2)該当してもsignificantly moreが存在するか、という順に判断を行っていきます。

この、significantly moreという要件は、Alice判決が出た当時から102条(新規性)や103条(非自明性)の要件と重複するところがあるのではないかとの指摘がありました。つまり、abstract ideaに対してsignificantly moreがあるということは、このabstract ideaと比較して何らかのinventive stepがあること、さらには、obviousnessがあることと密接に関連するのではないかという議論があります。この点について、講師の吉田先生は、ベン図(集合図)をホワイトボードに記し、101条の集合と102条の集合と103条の集合にはそれぞれ重複部分が存在すると考えていいのではないかと説明していました。

さて、ご存じの方も多いと思いますが、欧州特許条約においては52条において特許適格性の判断に技術的特徴の有無を入れていませんが、明細書の記載要件(施行規則27条)や特許請求の範囲の記載要件(施行規則29条)において間接的に、発明には技術的特徴が必要であることを要求していると考えられます。加えて、いわゆるPreamble部分には従来技術の技術的特徴を記載すること、明細書には発明の技術的効果を記載することが要求されています。これらを考えてみると、欧州特許条約では、特許適格性を満たすには、当該発明が技術的特徴を備え、しかも、その効果も技術的である必要があります。こう考えると、米国と随分違う判断をしていることがわかります。

で、日本ですが、ざっくり言えば、ソフトウェア関連発明において、「ソフトウエアによる情報処理が、ハードウエア資源を用いて具体的に実現されている」(最近、この文言が審査基準から審査ハンドブックに移ったんですよねぇ)ならば発明成立性(特許法29条1項柱書要件)を認めています。なので、従来技術に対するsignificantly moreであるとか技術的特徴とかについては、発明成立性では問わないことが多いように感じています。この分、米国ではabstract ideaと判断される可能性の高い発明が、日本では発明成立性ありとされるケースが出てくるのではということを言われる方がいらっしゃいます。一方、従来技術と考えられるabstract ideaから出発してこれをコンピュータにより実現した場合は、進歩性なしとして処理されるはずです(審査ハンドブック付属書B第1章の2.2.3.2 当業者の通常の創作能力の発揮に当たる例 に書いてあります)。あと、特許請求の範囲に記載された発明が、全体として自然法則の利用性に欠けるとの判断がされることもあり得ますけどね。

つまり、従来技術であるabstract ideaから出発してこれをコンピュータにより実現した発明は、米国ではsignificantly moreがないとされ、EPOでは技術的特徴も技術的効果もないとされ、日本では進歩性ないとされるんだろうと考えています。最終的には似たような結論(特許性なし)になるわけですが、論理構成の差が面白いように思います。

まぁ、この辺の議論は知ってる方も多いかと思いますので、一つの覚え書きとして。

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知的財産/特許」カテゴリの記事

コメント

通行人さん、こんにちはhappy01

ああ、中央知財研のやつですね。先週は外出が多かったのでまだ目を通してません。ご指摘、ありがとうございました。

とは言え、実は、発明成立性にinventive stepがいるといった議論は、自分で書いておいて何なんですが、結構古くからある議論だと記憶しています。その意味で、Alice判決でまたその問題が脚光を浴びるようになったんだなぁ、ということで記事を書きました。

先日出たパテントの別冊号にも同じ趣旨の論考が出てました

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