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弁理士の仕事は人工知能に奪われるのか(補遺)

先日、人工知能と弁理士業務についてのBLOG記事を掲載したところ、思いの外反応があって、ちょっとだけ嬉しいです(但し、何となく私が議論の蚊帳の外にいる気もcoldsweats01)。皆さんの反応とかを拝見して、ちと書き足りなかったなぁと思う箇所がありましたので、少し長いですが補遺を。

先日の記事では、実は、ソフトウェア関連発明についての明細書作成業務に人工知能が使えるかという議論を意図的にしていません。それは、ソフトウェア関連発明と人工知能との親和性は結構あるので、真面目に議論するといよいよ自分の身が危ういかなぁという、何という保身的な考えに基づくものでした。とは言え、避けて通れる話ではないので、ちゃんと議論をします。

以下、ソフトウェア関連発明の明細書とは、機能実現手段により請求項が記載されており、この機能実現手段が記載された機能ブロック図及びハードウェアブロック図の少なくとも一方とフローチャートとが図面に記載されたものであると考えます。

この前提に立って考えると、発明が汎用コンピューター上で実現可能であるならば、機能実現手段の名称をある程度限定して考えることができます。つまり、制御部、入力部、出力部、記憶部、通信部くらいの機能実現手段に単純化し、各機能実現手段に「何が入力され」、この入力に基づいて「何をして」、そして、その結果として「何を出力する」かということを当該発明のSTFとして捉えることができます。この解釈は決して無理なものではなく、各機能実現手段をシステム的に考察したものと考えられます。特に、近年の米国特許出願実務では、「回路」が何をするかということを記述した請求項を立てることで、いわゆるmeans plus functionであるとの解釈を避ける請求項を立案することを推奨している事務所がありますので、この流儀に沿って記載した請求項は、上に書いたような手順による請求項と概略等しくなります。

少し前振りが長くなりましたが、こういった準備をした上で、発明者に、自分の発明を上に書いた機能実現手段のそれぞれに当てはめる作業をしてもらいます。要は、各機能実現手段への入出力及び処理内容を自然言語レベルで記載してもらいます。その上で、この自然言語レベルの記載を、類似する特許(公開)公報を参照しながら請求項としての表現に推敲、修正する作業を人工知能により行います。これで請求項の原案ができます。この原案に基づいて独立請求項及び従属請求項に入れるべき内容を人間が判断すれば請求項が完成します。加えて、従属請求項に加入すべき内容についても、類似する特許(公開)公報を参照して人工知能が推奨してもいいでしょう。

次に、背景技術と解決すべき課題については、発明者の自由記載でもいいですし、特許文献として記載すべき特許(公開)公報の要約を人工知能により作成してもいいでしょう。課題は幾つかの選択肢を予め用意し、それを選択させるやり方もできるでしょう。

ハードウェアブロックの説明は、汎用コンピューターであるならばほぼ一律にできますので、ここは適宜過去のものの使い回しができます。機能ブロック図の説明は、請求項の記載のコピーがあれば最低限の開示義務は果たせます。それ以上の記載を望む場合は、専門家の推敲が現状では必要だと思います。

問題はフローチャートです。フローチャート及びその説明くらいは発明者に作成してもらいましょう。フローチャートの自動作成作業に関する研究はされていると記憶しているのですが、特許明細書で要求されるフローチャートは実際のプログラムに対応するフローチャートと違うところが多々あると思いますので、現在までの知見を生かすのには時期尚早のように思っています。発明の効果は課題の裏返しですから自動作成ができそうです。図面の簡単な説明も発明者に作成してもらいましょう。ま、テンプレート的な記載もできますので、あるいは、ある程度の選択肢を用意すれば何とかなるかもしれません。

ハードウェアブロック図は使い回しができそうです。機能ブロック図も、機能実現手段を上に書いたように限定してしまうと、かなり使い回しができそうです。

以上の手順で作成した明細書原案を専門家が推敲すれば、出願に堪えうる明細書ができてしまいそうです。当然、このような手順で作った明細書は、正直なところ最低限のレベルを満足する程度のものだと思います。上に書いた手順には私が業務でやっているノウハウはほとんど入っていません。とは言え、人工知能を用いた明細書及び特許請求の範囲の自動作成はこの程度のレベルまで至ってるのではないかと思っています。こうなると、専門家としての私は、いかに定型化できないノウハウを明細書に盛り込むのかということを必死に考えないと、あっという間に人工知能に置換されてしまいそうです。

人工知能と特許業務との関係については、もう一つネタがあるので、これはそのうちに。

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