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弁理士の仕事は人工知能に奪われるのか(さらに補遺)

7月1日は弁理士の日で、ドクガクさんからのお題が「知財業界でホットなもの」ということでしたが、私としては、過去2回自分のBLOGで知財とAIについてお話ししてきて(これこれ)、ネタが1つ残っていたので、これをお話しすることでドクガクさんからのお題に答えようかな、と思っています(前振りが長すぎますね)coldsweats01

さて、数ヶ月ほど前に出席したシンポジウムで、日立製作所の方が汎用AIについて発表されていました。詳細は資料に譲るとして、私が理解した範囲でみると、いわゆるディープラーニングによる人工知能において、人工知能システムが各パラメータの因果関係を特段解明することなく、膨大な教師データに基づいて自己学習して最善の結果を得るシステムのようです。例として挙げられていたのが、人工知能システムがブランコ漕ぎをやったり、コールセンターにおける人員配置等の最適化でした。いわゆるCRMにおいて、利益最大化を命題として各商品の配置とかを考えさせる用途とかによさそうです。

で、この発表を聞いた後に私が無謀にも考えたのが、知財戦略立案に人工知能を使えないか、ということでした。

知財戦略という言葉をどのように定義し、何をすることが知財戦略であるかという根本的なところでなかなか一致を見るのは難しいのですが、ここではごく単純に、当該事業(会社単位に広げると少しだけ大変なので、ここでは事業単位で考えます、会社の事業が単一ならば会社と読み替えることもできます)の利益の最大化をもたらすための知財業務の方向性を決定し、また実際の数値計画を立案することだとします。ポリシーとかスローガンも知財戦略に含まれうるのですが、ここはAIの範疇にすることが難しいので、取りあえず外しておきます。

こう考えると、知財戦略で決めるべき事は幾つかのパラメータを決定することに集約されます。つまり、当該事業に関連する知財関係の年度毎の出願件数、権利成立件数、訴訟提起件数、ロイヤリティ収入金額といったパラメータについては主体的に決定できることが多いですので、担当者が自ら「知財戦略」として立案、実行することができます。
次に、第三者との関係性で決まってきて、しかも事業の収益に影響を与えるであろうパラメータが幾つかあります。例えば、訴訟被提起件数(そしてその結果としての賠償金支払金額)、ロイヤリティ支払金額といったパラメータについては、種々の外部条件を考慮することで年度毎の計画数値を(えいやであっても)決定することができます。
あとは事業の利益を判断するに当たって、特許の事業への貢献度を見積もる必要があります。ここが一番難しいのですが、正直、ここは担当者の感覚で決定するしかないです。あと、良く言われる三分法、四分法(事業の利益を1/3、1/4が知財の貢献度)はここでは使えません。それは、三分法とかは事業の利益ありきの考え方であって、知財戦略立案時の知財の貢献度とは、知財の存在により事業の利益をどれだけ押し上げられるかですから、ある意味で時間軸が逆方向なのです。

そして、これらのパラメータと事業の利益とを上述した汎用AIシステムに入力して、複数年度のパラメータを解析することで、事業の利益を最大化するためのパラメータが決定できないか、と考えてみたのです。これこそ、AIを用いた知財戦略立案なのです。

…とここまでお読みのみなさんは、何かおかしいと思われたのではないかと思います。

まず、汎用AIシステムに入力できるパラメータは精々数十年単位のものになります。この程度のサンプル数で汎用AIシステムが適切な解(つまりパラメータの好ましい数値)を定められるのか。この点については、汎用AIシステムの出来によると思いますが、現状では数十年単位のデータ量ではかなり難しいのではと思っています。入力パラメータは汎用AIシステムにとっての教師データになるわけで、ディープラーニングによる学習の効率を考慮すると、現時点でのディープラーニング技術ではパラメータの最適値を収束させるまでには至らないと思います。

もう一つ、AIシステムは各パラメータの因果関係まで考慮して結論を出すに至らないことがあります。つまり、出願件数をこの程度にすべしとのアウトプットが出た時に、それは何故かという理屈づけも難しいですし、従って、AIシステムがアウトプットしたパラメータから最終的にずれた値になった時にどうなるかも予測できません。人間は、ある意思決定をする時にその意思決定に至るまでの過程の妥当性を検証したがります。それは、いわゆるPDCAサイクルにおいてD以降の工程をするためのことでもあります。AIシステムは、そういった因果関係や意思決定までの過程を見せてくれないでしょう。そこはAIシステムの現時点での目的ではないですし、検証なり検討は正に人間しかできないことかもしれません。
で、それはそれでいいのかもしれませんが、でも、上に書いた多数のパラメータの因果関係を人間が何かしらのモデルを仮定して検証することも実際には不可能に近い作業です。パラメータが多すぎて何がなにやらわからないわけです。

この辺りをどう解決するかについて、もやもやとした状態ですが、面白いアイデアを持っています。ただ、このアイデアの説明をすると極端に長文になりますので、またの機会によろしくscissors

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