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調査概念って…

どうも定期的にBLOGを更新できずにすいませんm(__)m もうこのBLOGも色んな方から忘れ去られていると思うので、思いっきり勝手なことを書こうかとも思うんですが、そこはぐっと我慢して少しはまともなことをcoldsweats01

今日は小ネタで。

ちょっと前に、特許庁が先行技術調査にAI(人工知能)を用いる検討を始めるというニュースが流れてきました。人工知能ネタは既に3回記事にしているので、本日はそこがポイントではないんですが、では、世におられる特許サーチャーのお仕事って人工知能で置換できるような「単純な」ものなのか?ってあたりを探ってみたいと思います(結論はそこにないんですけどね)。

私が把握している限りで特許サーチャーさんがやられている仕事ってのは、調査対象の技術的理解→調査概念作成→検索式作成→検索→抽出公報検討→最終結論、って流れだと思っています。この仕事の流れは私が勝手に考えたのではなくて、INPIT(工業所有権情報・研修館)さんが公開している資料に書いてある(調査概念って言葉は使ってないんですが)ことですので、用語はともかく、この流れは一応オーソライズされたものだと思っています。で、AIでできそうなことというのは、調査概念作成から検索式作成までだろうと思います。

さて、この「調査概念」って何か、実は、特許サーチャーのお仕事で、ここの部分が意外と他の人に理解されていないように思っています。つまり、技術を理解できれば、その技術を表現するキーワードが想起できて、このキーワードを使って検索すれば十分なのでは、あるいは、技術を表現する特許分類(IPCとかFIとか最近はCPCとか)が特定できれば、この特許分類を使って検索すれば十分なのでは、と思われがちのように思っています。

しかし、まず、特定の技術を表すキーワードは一つではなく、結構なバラツキがあります(検索を容易にするために明細書で使用できるキーワードを特定すべしなどという極論もあり得るでしょうが(^_^;))。このため、所謂シソーラスという概念を用いて複数のキーワードを使った検索が必要になります。また、特定の技術に対応する特許分類は時に一つに限定されず、種々の観点から特許分類を選定する必要があります。

こういった、ある意味での検索の対象となる母集団を概念的に記すために、特許サーチャーさんは調査概念を作成します。そして、この調査概念を包含する母集団を検索するための検索式を作成するわけです。この、調査概念は正に調査対象の技術から概念的に抽出されるものですから、AIにより調査概念を作成するのは結構骨が折れる作業ではないかと思っています。

あと、一部の特許商用データベースで「概念検索」という調査メニューを用意しているところがありますが、私が理解している限り、この「概念検索」は、自然文からキーワードを切り出してシソーラス辞書を使ってキーワードを展開し、展開したキーワードを使って検索をしているだけなので、上に書いた「調査概念」を一部実現してはいるものの、言うほど「概念」的ではないと思っています。

で、特許サーチャーさんがこの「調査概念」を使って先行技術調査を行っているのですから、実は、企業の知的財産担当者であれ特許事務所の技術担当者であれ、特許サーチャーさんに先行技術調査を依頼する時には、自分なりにこの「調査概念」を作成して、この「調査概念」を一つのインタフェースとして会話をすればいいんではないかと思っています。自分も経験があるのですが、自分としては当該技術について明確にかつ丁寧に説明したつもりであるにもかかわらず、提出された調査結果が今ひとつ納得がゆかないことが何度かありました。先行技術調査が予想通りに行かないことは多々あることで、大抵は適切な公報を発見することができないことがその理由で、ないことを証明するのは悪魔の証明ですからこればかりは致し方ないんですが、上に書いた調査概念のずれがその理由ではないかと思うこともそれなりにありました。その後、自分なりの調査概念を特許サーチャーさんに提示して、この調査概念に基づいて説明なり議論をすると、だいぶ思い通りの先行技術調査結果が得られるようになりました。

こういった話をすると、「調査概念を作成するのは特許サーチャーの責任だから、適切な調査概念を作成できないのは特許サーチャーの能力不足だ」という意見が出てくるように思います。しかし、共通の言語を持たずにコミュニケーションをすることの難しさは明確にありますし、最終的に満足する先行技術調査結果を得るためには様々な努力をしてもいいと思うのです。つまり、後工程ばかりに責任を負わせるのではなくて、前工程から努力をするということです。実際に、自分は調査概念を共通言語として特許サーチャーさんに業務を依頼することで、かなり効率は向上したと思っています。

で、そろそろ長くなったので、本来なら調査概念の具体的内容について説明しないといけないんですが、その辺りは先程ご紹介したINPITさんの研修資料に書いてありますので、さくっと割愛させていただきます(なんという無責任なbleah

あと、今までの話は先行技術調査についての話ですが、クリアランス調査や無効資料調査については、調査概念の設定の仕方がかなり違ったり、無効資料調査の場合はmissing pieceを見つけるという観点が主になるので、調査概念という言い方があまりそぐわない場合もあったりで、これは個別具体的に調整が必要になります。

本日はこんなところで。

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