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HPによるSamsungのプリンタ事業買収

これから時々知財ニュースを参照して、知財アナリスト的な記事も掲載していこうと思います。とは言え、仕事ではないのでツールが無料なものに限定されることもありweep、隔靴掻痒な内容になってしまうのが微妙に残念ですがcoldsweats01

Samusungがプリンタ事業をHP(最近、Hewlett-Packardが分社してプリンタ+PC事業の会社の名前はこれになりましたので、略称でも何でもないのです)に10億5000万ドル(だいたい1000億円くらい)で売却するというニュースは、これとともにSamsungが6500件以上のプリンタ関連特許および約1300人の研究者とエンジニアを獲得するということがニュースリリースに書いてあったこともあり、知財系のニュースでも報道されていたように思います。一応、日本語でのニュースとしてこれこれ、Samsung側のプレスリリースとHP側のプレスリリースとをそれぞれご紹介しておきます。

このニュースを聞かれた方の中には、「あれ?Samsungってプリンタやってるんだ」という素朴な疑問を持たれた方もそれなりにいらっしゃると思います。IDCが発表した直近の(2015年の)世界プリンター/複合機市場実績に関するプレスリリースをご紹介しておきます。このプレスリリースに紹介されている数字を見ると、Samsungが世界シェア第5位になっています。もう一つ、少し古い記事なんですが、Samsungは後発メーカーであることから脱却するために、他の事業(例えばTV)でやった手法である、デザインを重視することで付加価値を高めて売上を上げるといおう手法を採用しています。とは言え、Samsungのプリンタは日本国内になかなか入ってこないので、実像がつかみにくいのは確かだと思います。

ただ、上にご紹介したランキングの中に、インクジェット製品を主に販売されているエプソンが3位にランクされていることからもわかるように、このランキングはプリンター、複合機、コピー機の全てを足し合わせた数字ですので、対象製品はかなり広いということがおわかりになろうかと思います。

プリンター/複合機というカテゴリーで考えると、ざっと考えてみたら、いわゆるレーザープリンタ(これはプリンター単機能機ですね)、インクジェットプリンタ、複合機(コピーもファックスもプリンターも兼ねる)及びコピー単機能機が含まれます。レーザープリンタというカテゴリーで考えると、HPはIBM(今はLexmarkですね)とともにレーザープリンタとしては老舗に属します。普通紙コピー機はXeroxが世界に広めた後、日本のキヤノンを含めた各社が鎬を削り、そして、レーザープリンタ技術を応用したコピー機が出現したことで、レーザープリンタとの垣根が崩れたわけですが、世界的シェアで考えると、レーザープリンタと複合機とではその顔ぶれが違ってきます。カテゴリー毎のシェアについては、二次資料を見つけたのでここで貼っておきます。

プリンター業界のここ10年あるいはそれ以上前からのトレンドとして、大規模オフィスではネットワークを介して複数のプリンター/複合機に接続可能になり、特に、印刷枚数の管理及び削減、さらにはセキュリティの観点から、非接触式ICカードを用いて部署単位での印刷/コピー枚数の管理及び課金処理、そして複合機の前に行って非接触式ICカードをタッチして初めて印刷が可能になるなど、ネットワークソリューションを含めて提供することが求められています。

さて、先程ご紹介した資料から見えてくることは、HPによるSamsungのプリンタ事業買収は、単純に考えれば、Samsungが非本流事業を切り離す一方、HPはSamsungのプリント事業を知的財産権や従業員とともに入手して、レーザープリンタにおける地位をより堅固なものにするためであると言えそうです。

ただ、HPのプレスリリースや、既にご紹介したニュースを丹念に読むと、HPはキヤノンを初めとした他社から、いわゆるプリンタエンジンと呼ばれる部分(ドラムを含めたレーザープリンタの中核部です)を購入していたところ、Samsungのプリンタ事業買収に伴い、Samsungが製造していたプリンタエンジンに切り替えること、そして、HPは、買収のプレスリリースとともに、A3対応の複合機の新機種を発表しています。つまり、HPは、プリンタエンジンの調達先を一本化する決断をするとともに、これに伴って、日本メーカーの牙城である複合機事業のシェア拡大を目論んだ、ということです。実に戦略的な判断だと思います。

こういったストーリーを考えると、Samsungのプリンタ事業を日本の複合機メーカーが買収するという選択肢はあまり考えにくいです(ニュース発表時に、何故日本メーカーが買収しないのかという発言をFacebookでしましたが、前言撤回します)。日本の複合機メーカーは大抵プリンタエンジンを自社で製造しています。そして、仮に日本の複合機メーカーがSamsungのプリンタ事業を買収したとしても、Samsungのプリンタエンジンを持て余すことになると思います。

であるならば、日本の複写機メーカーは今まで通りの戦いをすることが得策になると言えます。面白いことに、キヤノンの御手洗さんはHPのプレスリリースで好意的なコメントを発表しています。これを穿った見方で考えるならば、キヤノンの有価証券報告書に記載されているように、キヤノンとHPとの間にはインクジェット製品に関するクロスライセンスがあり、また、Samsungは片面的な、つまり、レーザープリンタ事業の広範囲な技術についてにキヤノンからのライセンスを一方的に受ける契約が存在するようです。この情報に基づいて考えると、Samsungへのライセンスは相手先がHPに変わっただけであり、HPが複合機を売れば売るほどキヤノンにはライセンス料が入ってくることになります。キヤノンはHPにプリンタエンジンを販売していましたから、その分の損はあるものの、ビジネスとしては悪くないdealなのかもしれません。

あと、本来ならば特許数の比較もしたいところなのですが、HPはころころ社名を変えているので公報ベースの検索では名寄せが大変なのと、複合機に関する特許分類は多岐に亘るので検索自体が半端なく大変なので、大した検索はできていません。インクジェット製品を含めたプリンタ全般に関するIPCはB41Jですから、USPTOの登録ベースで検索するとSamsungで1057件、esp@cenetで8414件検索できました。一方、キヤノンだとUSPTOの登録ベースで703件、esp@cenetだと10000件を超えたので正確な数字が出ませんでした。で、これだけでは何か確定的なことは言えません。やはり無料のDBでは限界がありますねshock

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