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人工知能と特許調査(補遺)

あまり間を開けてないので申し訳ないんですが、またまた人工知能と知財業務(本日は特に弁理士業務)との関係についてです。最近、日本弁理士会の梶副会長(同じ委員会で何年もご一緒した方です)が、「AI(人工知能)が弁理士の仕事を奪う」という報道に対してどこかのオープンな場所で反論をされているようです。

個人的には日本弁理士会としてこういった情報を提供し、見解をオープンに示すことの意義は大きいと思いますので、大変歓迎しています。

で、前回の記事でも少し取り上げた、AIにより弁理士業務(ここでは明細書作成業務に絞って話をします)が代替されるかについて、前回もかなり詳細に記しましたが、その補遺として少し説明したいと考えます。

ご存じの方も多いと思いますが、弁理士が企業から出願代理を依頼される時、発明者様が作成した発明提案書をお送りいただき、この発明提案書の内容に基づいて(そして結構な割合で直接発明者様と打ち合わせをさせていただいて)明細書作成業務を行います。企業の立場からすると、明細書作成業務は、この発明提案書を作成するまでの業務と、この発明提案書に基づいて弁理士が作成した明細書原稿をチェックする業務とに分かれます。弁理士の立場からすると、大抵は発明提案書をいただいてから作業が開始します(とはいえ、全くのスクラッチで発明者様と打ち合わせをしてヒアリング結果に基づいて明細書作成業務を行うこともありますが、話がややこしくなるので、このルーチンは今回の検討からさくっと外します)。

つまり、企業の側からAIを使って明細書作成業務の省力化を図るインセンティブは、主に、発明者が発明提案書を作成することの省力化になろうかと考えます。で、発明提案書の作成業務は、前回書いたようにやってできないことはないレベルだろうと思います。企業は特定の技術分野にフォーカスした研究開発活動を行っており、ドキュメントのそれなりの蓄積があります。蓄積されたドキュメントを参考に、新規提案について対話型のチュートリアルというかツアーをすれば、発明提案書ができようかと思います。このようなシステムは、発明者に発明提案書作成業務に割く手間をかなり省力化できるメリットがあります。

一方、企業の側から発明提案書をベースとした明細書作成業務の省力化を図るインセンティブはあまり見つかりません。ただしこれは、従来通り特許事務所に出願代理を依頼することを前提とした場合です。この点をもう少し詳しく考えてみます。
発明提案書から明細書を仕上げる作業は、現状のAIではなかなかアプローチが見つからないというお話を前回しました。となると、仮に実現可能であったとしても、明細書作成業務を実行するAIシステムを構築する手間及び費用はかなりのものになろうと考えます。であるならば、明細書作成業務はブラックボックスとして置いておき、従前通り出願代理は特許事務所に依頼するという判断はそれなりの合理性があるのではないかと考えます。
一方、仮に実現可能であるならば、弁理士側がAIを用いた明細書作成システムを研究するということはあり得ることですが、一方でこれは自分の首を絞めかねない(明細書作成業務に従事する弁理士の人数を含めた工数減をもたらす)ですから、悩ましい問題ではあります。とは言え、完全な明細書作成とまではいかずとも、AIにより弁理士の明細書作成業務をサポートするシステムの実現の可能性はあると思います。どこが、ってのは各弁理士が切磋琢磨すればいいと思うのでここでは特段指摘せずにおきます(自分なりの考えはあるんですよ)。
で、地味に悩ましいのが、こういった省力化を図ったことが企業の耳に入った時、省力化の分の値下げを要求されないかということです。しかし、省力化の分は特許事務所の絶え間ない努力によるものですから、その分を価格に転嫁して値引きをするのはよろしい考え方とは言えないように思います。例えてみれば、消費者が「この商品は中国製なんだからもっと値引きしてよ」という話に近いです。特許事務所側の価格競争はあり得る話(とはいえ悩ましい話)ですが、それはあくまで自発的なものであって、依頼先から言われることでもなかろうかと思うのです。
どこまで実現の可能性があるかにもよるんですが、特許事務所としてはAIを使ってどんどん省力化して短時間勤務を実現し、豊かな生活を図るのがよろしいんではなかろうかとbleah
なお、膨大な件数の特許出願をしている大企業であるならば、AIを用いた明細書作成システムを研究して実現できれば、相当のコストダウンになろうかと思います。ただ、この大企業をクライアントとする弁理士が一気に仕事を失ってしまうというのも悩ましいところです。

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